「医師不足=医師になる人が少ない」ではない!女性割合や勤務場所の割合も

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入試で地域枠の将来的な増枠が考えられたり、田舎で医師不足が取り沙汰されたりと「医師不足」が言われがちな今日このごろ。
「少子化だし、医師のなり手が少ないのかな?」と考えている人も多いのではないでしょうか。

 

しかし、実は医師の総人口は増えており、「医師は増えているのに医師不足になっている」という一見意味のわからない状況になっているのです。

 

今回の記事では、日本全国の医師数の推移や男女比の変化、なぜ医師不足と言われるのかについて解説します。
都道府県ごとの、人口10万人あたりの医師数も表にしていますので、自分の出身県がどれくらいなのか是非チェックしてみてくださいね!

 

医師の数は増え続けている

 

冒頭でも触れたように、医師の数は増え続けています。
厚生労働省が2年毎に発表している「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」の2020年版によると、医者の数(医師免許を届け出ている人の数)は339,623人で、そのうち男性が262,077人(77.2%)、女性が77,546 人(22.8%)となっています。

 

人数の推移を見てみると、以下のようになります。

 

医師の数(人) 人口10万人あたりの医師数(人)
2012年 303,258 237.8
2014年 311,205 244.9
2016年 319,480 251.7
2018年 327,210 258.8
2020年 339,623 269.2

(参照:令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)

毎年8,000人〜12,000人程度の幅で医師の人数は増え続けており、また人口10万人あたりの医師数も同時に増え続けています。
医学部の定員数も高止まりが続いている状況のため、これからもしばらくは医師数が増加していくと考えられます。
ただし厚生労働省によると、2033年に医師の需要と供給が均衡状態になると考えられている(参照:医師の受給推計について)ため、将来的には定員数減少からの医師数減となることもありうるでしょう。

 

医学部の定員数について詳しくはこちらの記事で!

 

女性比率が特に上昇

今回の調査では、女性の医師数の増加が8.1%(5,788人)と顕著です。
男性の医師数の増加は2014年以降の調査では1.4〜2.6%の増加に留まっているのに対し、女性の医師数・割合は2014年調査では6.5%、2016年調査と2018年調査では6.3%と男性より多い増加率を辿っています。

 

女性の医学部合格率が高くなったこともありますし、女性医師の増加傾向はこれからも続くと考えられます。

 

「医師不足」の理由

医師の数が増え続けているのになぜ医師不足になるのでしょうか。
それには「選ばれる診療科に偏りが大きい」ことと、「大病院に医師が集中しがち」という2つの理由があります。

 

例えば、特に人手不足と言われがちな小児科や産科・産婦人科・外科は若手のなり手が少なくなっています。

 

29歳以下でその科を「主たる診療科」とする人の数(人)
小児科 産婦人科・産科 外科
2012年 1,038 701 1,593
2014年 910 659 1,484
2016年 841 581 1,422
2018年 942 652 1,354
2020年 996 781 1,518

(参照:令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)

 

若手のなり手が少なければ、当然将来的にはその分野の医師不足が懸念されるでしょう。
それ以外にも病院の採算などを理由に小児科や産科などを閉めるところも増えています。

 

また、いくら医師の数が増えても皆が大病院にばかり勤務していたとしたら、いつまで経っても田舎では医師不足のままです。

 

これについて、千葉県の例を見てみましょう。(参照:千葉県の医師数について 資料1
平成24年のデータでは、千葉県は人口10万人対医師数が平均して172.7人となっており、全国平均の226.5人を大きく下回っていました。

 

しかし、地区ごとに見ると安房保健医療圏のみ人口10万人対医師数は387.2人と突出していました。
安房地区には鴨川シーワールドや鋸山などがあり、(訪れたことのある人は想像がつくと思いますが)のどかであまり人口密度の高い地域ではありません。
それなのに千葉県内で一番医師の割合が高いのはなぜかというと、全国的に有名な「亀田総合病院」があるからです。

 

その証拠に、亀田総合病院を除いた人口10万人対医療施設従事医師数は127.3人と激減しており、一気に千葉県内でもワースト2位になってしまいます。
つまり、「亀田総合病院に『だけ』沢山の医者がいる」という状況になっていたのです。

 

医師そのものの数は増えていても「自分が必要としている科の病院が」「近くに」ない、という意味で「医師不足」と言われるのです。

 

勤務場所ごとの人数

 

勤務場所、つまり病院や診療所などのどこに勤務しているかの割合も出ています。

 

割合(%)
病院の開設者・法人代表者の割合 1.5
病院勤務者の割合 45.3
医育機関(医学部附属の病院など)で働く割合 16.9
診療所で働く人の割合 31.6
介護老人保健施設・介護医療院などで働く人 1.1
それ以外の場所で働く人(研究施設・公務員・産業医など) 2.8
その他(その他の仕事・無職など) 0.8

(参照:令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況)

 

やはり一番多いのは病院、つまり20床以上の入院用ベッドがある医療施設です。
高齢化社会のため介護老人保健施設などで働く人も少しずつ増えてきていますがまだ少数派で、多くの人は皆さんがよくイメージする「お医者さん」の仕事をしていると思ってよいでしょう。

 

また、若いうちは病院勤務者・医育機関勤務者が多く、年齢が上がるに連れて診療所で働く人の割合が増えていきます。
「若いうちに病院で経験を積み、ある程度のスキルが身についたら独立する」という形式に変化がないことが分かります。

 

都道府県ごとの医師数・人口10万人あたりの医師数

積極的に地域枠を設定している県とそうではない県がありますが、都道府県ごとの医師数の偏りはあるのでしょうか。

 

全国の都道府県の医師数と人口10万人あたりの医師数を一覧にしてみました。

 

医療施設で働く医師数(人) うち男性の割合(%) うち女性の割合(%) 人口10 万対医師数(人)
全国 323,700(合計) 77.2% 22.8% 256.6
北海道 13,129 83.3% 16.7% 251.3
青森 2,631 81.1% 18.9% 212.5
岩手 2,509 83.6% 16.4% 207.3
宮城 5,669 80.2% 19.8% 246.3
秋田 2,328 79.9% 20.1% 242.6
山形 2,448 82.1% 17.9% 229.2
福島 3,770 83.3% 16.7% 205.7
茨城 5,555 77.3% 22.7% 193.8
栃木 4,580 78.0% 22.0% 236.9
群馬 4,534 79.5% 20.5% 233.8
埼玉 13,057 77.4% 22.6% 177.8
千葉 12,935 77.6% 22.4% 205.8
東京 45,078 68.9% 31.1% 320.9
神奈川 20,596 73.8% 26.2% 223.0
新潟 4,497 81.6% 18.4% 204.3
富山 2,706 78.9% 21.1% 261.5
石川 3,302 80.3% 19.7% 291.6
福井 1,978 80.2% 19.8% 257.9
山梨 2,026 79.6% 20.4% 250.1
長野 4,994 80.4% 19.6% 243.8
岐阜 4,442 80.7% 19.3% 224.5
静岡 7,972 81.0% 19.0% 219.4
愛知 16,925 76.5% 23.5% 224.4
三重 4,100 81.5% 18.5% 231.6
滋賀 3,340 78.5% 21.5% 236.3
京都 8,576 76.2% 23.8% 332.6
大阪 25,253 76.3% 23.7% 285.7
兵庫 14,540 77.5% 22.5% 266.1
奈良 3,670 79.4% 20.6% 277.1
和歌山 2,840 80.0% 20.0% 307.8
鳥取 1,742 79.9% 20.1% 314.8
島根 1,994 78.3% 21.7% 297.1
岡山 6,045 77.8% 22.2% 320.1
広島 7,478 78.6% 21.4% 267.1
山口 3,491 82.2% 17.8% 260.1
徳島 2,435 75.2% 24.8% 338.4
香川 2,756 77.9% 22.1% 290.0
愛媛 3,693 81.1% 18.9% 276.7
高知 2,227 77.7% 22.3% 322.0
福岡 15,915 78.8% 21.2% 309.9
佐賀 2,356 77.5% 22.5% 290.3
長崎 4,187 79.9% 20.1% 319.1
熊本 5,162 80.7% 19.3% 297.0
大分 3,227 80.5% 19.5% 287.1
宮崎 2,733 80.6% 19.4% 255.5
鹿児島 4,504 81.2% 18.8% 283.6
沖縄 3,775 77.6% 22.4% 257.2

(参照:令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 / 男女比の計算は筆者が行いました)

意外に思われるかもしれませんが、人口比で考えた時に一番医師数が多いのは徳島県(338.4人)になります。2番目が京都府(332.6人)、3番めが高知県(322.0)人です。
逆に最も少ないのは埼玉県(177.8人)、その次が茨城県(193.8人)、新潟県(204.3人)です。

 

埼玉県や千葉県、茨城県などの東京のベッドタウンとなっている県では、医師そのものの数はある程度他県に比べて多いものの、それ以上に人口の流入が多いことから医師不足が引き起こされています。

 

中部地方以東で全国平均より人口10 万対医師数が多いのは東京都・石川県・福井県・山梨県のみです。
人口あたりの医師数については「西高東低」の傾向が強く出ていますが、人口10 万対医師数が多い県に行けば病院にかかりやすいとは限りません。
多くの県には「医師が多い地域」と「医師不足の地域」があるからです。

 

世界と比べると

 

意外に思われるかもしれませんが、世界に比べると日本の医師数は多いとは言えません。

 

OECD Health Statistics 2019“によると、人口1000人あたりの医師数の平均値は3.5人。
一番多いのがギリシャの6.1人、次いでオーストラリアの5.2人、ポルトガルの5.0人です。(ただしギリシャとポルトガルは「医師国家資格を持つ人数」であり、臨床医の数ではない)

 

日本は当時2.4であり、G7の中では最下位です。

 

ただし、厚生労働省が医師の需要と供給が均衡状態になると考えているときでも人口1000人あたりの医師数は3.1と想定されています。
医師数が多い国は逆に「医師が正規雇用につけない」などの問題も起きているため、一概に数が多ければいいというわけでもありません。

 

医師の数は増えているが、診療科が偏っているのが問題

日本の医師の人数は年々増えています。
特に伸び率の高いのが女性医師の割合であり、これからもさらに女性医師が増えることが期待されます。

 

それなのになぜ「医師不足」が問題になるかというと、人口の多い地域や大病院に医師が集中してしまい、田舎に医師がいなくなってしまっているからです。
産婦人科・小児科などの診療科のなり手が少ないことも理由です。

 

このような医師の偏在は、どの県でも抱えている問題です。
特に地域枠を利用した受験を考えている人は、自分の地域の医師数の偏りなどのデータを元に「なりたい医師像」と「求められている医師像」を考えてみると受験の手がかりになるでしょう。

 

 

 

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