知られざる沿革と改革!カリキュラムを改善し続ける鹿児島大学医学部
1949年に新設された鹿児島大学は、1955年に医学部と工学部を設置するに至りました。
現在は大規模な総合大学として名を馳せており、とりわけ「共同獣医学部」や「水産学部」という珍しい学部が目をひきます。
公式サイトによると水産学部は「マグロやエビなどの水産資源が無くならないようにきちんと管理しながら漁獲すること、それらの資源を大切で美味しい食料として無駄なく利用すること、それらの資源がいつまでもなくならないように生まれ育つ環境を守る」教育や研究をしており、「地の利」を活かした学業であり興味深いです。いつか、マグロやエビが美味しい地域に滞在してみたいものです。
また、学部が9つあるのに対して、大学院は10の研究科があり、「臨床心理学研究科」「共同獣医学研究科」「農林水産学研究科」などユニークな研究科が5つ以上あります。
本州の最南端に位置すると言ってよい鹿児島県にある、熱いソウルの国立大学であること間違いなしです。この記事を読んで、あなたも鹿児島大学医学部に詳しくなりましょう!
Contents
鹿児島大医学部は「他者への優しさを備えた優等生」
思いやりと探究心を重んじている医学部
鹿児島大学医学部について、公式サイトには大変興味深い沿革が載っています。
医学部は、明治維新直後の明治2(1869)年、薩摩藩が英国人医師で医学教育者のウイリアム・ウイリスを鹿児島に招き、西洋医学校と附属病院(赤煉瓦造りで赤倉病院と呼ばれた)を設立したのが始まりです。
医学校には全国から数多くの俊英が集まり、当時最新の英国式西洋医学を修得し、近代日本における医療の普及と医学の発展に大きく貢献しました。
医学校は西南戦争により閉校し、その後、明治13(1880)年から21(1888)年にかけて、鹿児島県立医学校の設置がなされましたが、医学教育の歴史は一旦そこで途絶えておりました。
明治になってすぐに英国人医師と西洋医学を採りいれたという経緯が、否が応でも興味をそそります。
鹿児島も横浜や長崎のように西洋文明の恩恵にあずかって発展した街であることや、「薩長同盟」を形成することに至った薩摩藩の力量や「先見の明」が察せられます。
全国から鹿児島に俊才が集まって英国医学を学んだという事はあまり知られていないと思いますが、もっと周知がなされてよいことですし、日本医学史にとっても重要な事柄です。
また、医学科と保健学科を合わせた医学部の教育理念はホスピタリティをもって語られており、いわば文武両道といったところです。
医学部の教育理念は、「人間性豊かな」、「地域に貢献する」、「研究心旺盛な」、「国際的視野に立つ」医学・医療の担い手を育成することにあります。意欲にあふれる学生の皆さんが、十分に計画された授業での学習やサークル活動などを通してお互いに切磋琢磨し、医学医療人に必要な知識、技能、倫理観を修得するための環境を提供いたします。
国際的視野と地域貢献は地方の国立大学としては外せない要素であり、それと同時に「人間性」と「研究心」が重要視されています。一般的には研究や勉強に打ち込みすぎるとワンマンになっていきますが、人間性や倫理性を備えたバランスの良い医療人になってもらうためにサークル活動などでの交流にも期待しているという事です。
参考までに「医学部の求める人間像」は以下の通りですが、4つしかなく要求は少なく、学生ののびのびした成長を促す雰囲気を感じます。その中では「研究」や「探究」は重視されているほうです。
- 思いやりのある人
- 幅広い基礎知識を有する人
- 人の生命や社会に深い関心をもつ人
- 探究心があり、物事に積極的に取り組む人
鹿児島大学や同大学医学部のキャンパスライフや学風を知るために、また面接対策のために、上記のことを参考にしてみて下さい。
時代と地域に即した医学科を目指して
ここからは、鹿児島大学の医学科に焦点をあてて解説していきます。
医学科長のメッセージからは、「南九州にあって150年余りの伝統を受け継いだ医療人育成の使命」を大切にしている一方で、「時代の要請」や「急速な進展を遂げる医療領域」といった昨今的要素に素早く追いついていく努力が感じられ、教育や臨床を実施する大学としての日進月歩の発展が見て取れます。国際医学教育水準に適合していると認定され続けている医学教育システムの継続的改善も、その1つです。
ここで、鹿児島大学医学科を理解するのに重要な点を2つ挙げます。
1つ目です。医学科の教育目標として、育成する人材が2つに絞って掲げられています。
1)人を尊重し、人と地域社会のため最善の医療を実践する優れた臨床医
2)科学的思考力を有して生涯学習し、さらに医学、医療及び社会の発展に貢献する医師及び医学研究者
人間的・人文主義的側面と、地域社会貢献が最重視されています。
2つ目は、離島や僻地(へきち)における臨床や実習です。医学科の卒業生(諸先輩)のサポートを受けつつ臨床医学を実践しているとのことで、タテのつながりの太さが示されています。これについては、医学科長の言葉を引用します。
臨床医学教育においては、実際の医療現場での実習が特に重要になりますが、鹿児島大学は鹿児島県、鹿児島県医師会をはじめ多くの地域医療機関や行政関係者のご協力を得て、離島やへき地を含む鹿児島県全域で特色ある臨床実習を行っています。地域との密接な連携には、医学科卒業生の支援が不可欠であり、鶴陵会(鹿児島大学医学部医学科同窓会)の諸先輩方のサポートにより、現在の臨床医学教育が実践できています。
以上の内容より、鹿児島大学医学科は、「時代に即し、昨今の社会や需要に見合っていること」を重視しつつ、地域のニーズも把握しながら発展していることがお分かりいただけたと思います。
なかなか、ここまで骨太で先進的な医学科は少ないです。迷信は信じない私ですが、鹿児島大学の医学科は、江戸末期の名藩士や明治時代の士族といった時代を作っていった大人物の「進取の精神」を受け継いでいるに違いありません。
なお、鹿児島大学医学部医学科の、いわゆる3つのポリシーは、以下の公式ページで確認できます。国立大学の医学科に進学した人には公式文書を一読することをおススメします。あえて言うと、卒業時に求める条件が「知識」「診療実践」「地域社会」「研究」の4つに大別されているのが特徴ですが、それ以外にも「データ解析」など鹿児島大学医学科ならではの項目は沢山あります。
医学科の前期日程の倍率は高くない
医学科の志願倍率は6倍強
令和5年度(2023年度)の入試状況は、以下の通りです。参考までに、保健学科についても記載します。
学 科 |
入学定員 |
志願者数 |
入学者数 |
医学科 |
110 |
696(282) |
110(45) |
保健学科 |
120 |
428(334) |
120(105) |
・看護学専攻 |
80 |
230(216) |
80(78) |
・理学療法学専攻 |
20 |
127(64) |
20(12) |
・作業療法学専攻 |
20 |
71(54) |
20(15) |
(出典:医学科公式サイト。カッコ内は女子の人数です)
医学科の志願倍率は6倍を超えており、人気のほどがうかがえます。
ですが、細かく見ると、前期日程の倍率は3.2倍~3.3倍、後期日程の倍率は11.6倍~17倍、学校推薦Ⅱの倍率は2.4倍~3.1倍と、医学科の入試でも開きがあります。
医学科は総合型選抜を実施しない
鹿児島大学医学科では、5つの種類の選抜が行われています。「第2年次学士編入学」はすでに大学を卒業した人が対象であるため注意して下さい。
入試区分 | 募集要項発表時期 | 入試実施時期 |
---|---|---|
第2年次学士編入学試験 | 3月中旬以降 | 6月上旬・7月上旬 |
学校推薦型選抜Ⅱ | 11月上旬 | 2月上旬 |
私費外国人学部留学生選抜 | 11月上旬 | 2月上旬 |
国際バカロレア選抜 | 11月上旬 | 2月上旬 |
一般選抜(前期日程・後期日程) | 11月上旬 | 前期日程:2月下旬
後期日程:3月中旬 |
(出典:医学科公式サイト)
医学科では総合型選抜はなく、学校推薦型選抜は2月の実施であることや、一般選抜の後期日程でも入試が実施されることが特徴です。
令和6年度入試の共通テストや一般選抜の日程、ならびに個別試験の学生募集要項は以下のページに掲載されていきますので、ときどきチェックしてみましょう。
合格者最高点などの細かい入試結果のデータを知りたい方は、以下のページより各年度のPDFファイルを閲覧することができます。医学科のみの情報はなく全学部が掲載されているため読むのは大変ですが、網羅的に知ることで安心できる人にはおススメです。
小論文のような質問もある面接試験
2023年度入試において、医学科の前期日程は共テ得点率が80%で偏差値62.5、医学科の後期日程は共テ得点率が86%でした。
ここでは、面接試験について触れておきます。
医学科の前期日程では、共通テストが900点で個別試験は920点でしたが、この個別試験の920点のうち面接試験は120点でした。また、面接試験が10点以下の場合は、どんなに総合得点がよくても不合格になる旨が要項に記載されていました。
面接では、鉄板の質問である医師志望理由と本学志望理由に加え、「部活動について」「ボランティアについて」で人間性が試され、「関心のあるニュース」で社会性を問われることが多いようです。
さらに、地域医療というテーマで、離島や僻地の医療について問われることがあり、こちらも知識とともに社会的関心や情熱のほどがチェックされます。
先ほどの「細かい入試結果データ」によると、九州出身者と九州以外で合格率の差が少なく、また現役生と浪人生でも合格率の差が少ないです。きわめてフェアな入試であると言えますが、地域医療や九州南部への熱い思いをアピールすることで面接の結果が変わりますので、九州出身の受験生は多少得をしていると言えるでしょう。
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