医学部と薬学部の違いとは? カリキュラム・偏差値・学費など
医学部を目指す方々の中には薬学部を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は薬学部と医学部の違いやママさん薬剤師Nさん・製薬会社に勤務するAさんへのインタビューをまとめました!
Contents
医学部と薬学部の違い カリキュラム・偏差値・学費について
医療系の学部に行きたいと考えた時、まず選択肢に上がってくるのが医学部に薬学部、看護学部など。
中でも、「病気の人を治したい」という志望動機から医療系を目指す場合、迷ってしまうのが医学部と薬学部なのではないでしょうか。
「どっちも病気を治すんだよね?」「同じ医療系だけど、何が違うの?」と考えてしまいますよね。
医学部と薬学部の違いについて説明します。
アプローチ方法が違う
簡単に2つの学部を説明すると、以下のようになります。
・医学部=人体の構造や機能について学び、病気の診断方法や治療方法を学ぶ
・薬学部=薬の働きや構造、薬剤に関する制度や法律などを学ぶ
どちらも「人の体を治す」ことについて学びますが、医学部では人体サイドから、薬学部では薬を中心として勉強する点に違いがあります。
病気そのものを研究したいのなら医学部に、病気を治す薬を研究したいのであれば薬学部に進むといいでしょう。
医学部と薬学部のカリキュラムの違いは以下の通りです。
《医学部》
・1〜2年次:一般教養(哲学や生命倫理など)
・2〜3年次:基礎医学(解剖学・免疫学・薬理学など)
・3〜4年次:臨床医学(循環器・消化器・呼吸器など)
(実習前にCBT・OSCE(共用試験))
・5〜6年次:臨床実習
医学部は「モデル・コア・カリキュラム」という共通カリキュラムが文部科学省によって制定されているため、どの大学でも3分の2程度は同じ授業になります。
《薬学部》
・1年次:一般教養
・2〜3年次:薬学基礎(数学や化学など)・化学系薬学・生物系薬学など
・4年次:実務前実習など(4年制は卒業研究)
(実習前にCBT・OSCE(共用試験))
・5年次:実習
・6年次:卒業研究
薬学部も医学部と同様「モデル・コア・カリキュラム」があるため、どの学校に行っても3分の2は同じ授業になります。
4年制の薬学部は「生命創薬科」「薬科学科」などと称されることが多く、主に薬学研究者育成を目的とした学科、6年制薬学部は薬剤師育成を目的とした学科と目的が異なっています。
新薬開発について 製薬会社のAさんにインタビュー 生物系・農学系でも薬開発に携われる
【お話を聞いた方】
Aさん
【学校】
筑波大学生物資源学類 修士修了
製薬会社勤務。現在社会人4年目。
– 製薬会社で研究しているのは薬学部卒の人ばかりなのでしょうか?
Aさん:私の働く会社には生物系、農学部の人もいますね。
再生医療の発達段階で、バイオ系の知見への需要が出ているので。
女性も職場には多いです。
もちろん薬学部出身の人も多いですが、薬剤師の免許をとって研究の道に進む人は比較的少ないですね。
私は腎臓を研究していた研究室に所属していて、たまたま会社がその領域の人を求めていたのでこの会社に入ることになりました。
– 普段はどんな1日ですか?
Aさん:毎日実験してデータを取っていきます。
定時は9:00-17:30ですが、フレックスか裁量労働制になります。
3年目まではフレックスでしたね。
大学の時は自分たちで動物に餌やりなどもしなくてはいけなかったため、休日や不必要な拘束時間がありましたが、製薬会社は専門の業者を入れているので、自分たちでやる必要はありません。
目的を期日までに達成するため、やることとやらないことを決め、ゆとりを持ってやっています。
– どんなふうに薬ができていくのでしょうか?
Aさん:最初はプロジェクトを立ち上げるところからですね。
最初は化学系の薬剤研究者、ケミストが合成した複数の化合物の効果を検討します。
望む薬効があるかどうか、安全性はどうか、などですね。
安全性などの基準をクリアできたら、クリニカル、つまり臨床試験の段階になります。
臨床試験にはフェーズが4つあります。
第Ⅰ相:少人数の健康な人に飲んでもらう
第Ⅱ相:少人数の疾患を持った人に飲んでもらう
第Ⅲ相:大人数の疾患を持った人に飲んでもらう
第Ⅳ相:薬の市販後行われる、予期せぬ副作用や使用法などについての情報収集
「治験バイト」の募集があるのは第Ⅰ相の部分ですね。
第Ⅱ相・第Ⅲ相は患者の選定や症例数などのルールがあり、計画立案も必要です。
トータルで最短でも10年はかかります。
臨床試験はやり直しができないので、慎重にやらなくてはいけません。
– どんなところに仕事の面白さを感じますか?
Aさん:研究で、わからないことを解明していくのが面白いです。
みんなで力を合わせて研究をしたい、何かを作り出すことが好きな人に向いていますね。
自分がそのタイプかどうかは、大学や大学院に行けばわかると思います。興味のある研究室を選んでみるといいですよ。
医学部と薬学部の偏差値・学費の違い どちらも医学部>薬学部
医学部と薬学部の内容の違いがわかったら、次に気になるのは「難易度の差」ですよね。
偏差値・学費・入試科目についても比較してみました。
医学部 | 薬学部 | |
偏差値(ボーダー) | 60〜72.5 | 〜65.0 |
学費(トータル・国公立) | 350万程度 | 350万程度
(4年制:250万程度) |
学費(トータル・私立) | 2000万〜5000万程度 | 1200万〜1400万程度
(4年制:700万〜750万) |
入試科目 | 英語
数学(ⅠAⅡBⅢ) 理科(化・生・物から2つ) |
英語
数学(ⅠAⅡB) 化学 |
医学部より薬学部のほうが偏差値が低いため、一般的には薬学部のほうが入試は簡単でしょう。
しかし、それでもその他の学部学科よりは高いため、簡単には合格できません。
学費は国公立の場合、差はありません。
これは文部科学省によって国立大学の学費は標準額が定められているためです。
ただし、県外者や市外者の入学費を高額にしている場合もありますし、標準額の120%までは増額が認められているため、実際は学校ごとに必要な学費は少しずつ異なります。
また、実験や実習にかかる費用や教科書代などは別なので、実際にはもっとお金が必要になるでしょう。
私立の場合は、医学部と薬学部ではかなり学費の差が大きくなります。
学校にもよりますが、医学部と薬学部では1000万〜2000万円ほどの差が出ることも。
一見「薬学部ってリーズナブル!」と思えてしまいますが、私立理系は4年間で550万円程度の学費。
薬学部の学費も、その他の学部から見ればかなり高い部類になります。
気になる入試科目は、学校にもよりますが薬学部では「数学Ⅲ」が課されない・理科が化学1科目でいいところが多いという違いがあります。
数学はかなり負担の重い科目ですし、理科が1科目減るのは勉強する上で嬉しいですよね。
ママさん薬剤師Nさんにインタビュー 医学部同様、国試や実習が大変!
次は調剤薬局の薬剤師として働くNさんへのインタビューについて紹介します!
国試と大学受験、大変なのはどちらなのでしょうか?
今回はこちらの方にインタビューさせて頂きました。
【お話を聞いた方】
Nさん
【学校】
日本大学薬学部卒業
薬剤師として、東大病院で約10年勤務し、現在は育児をしつつ調剤薬局で勤務。
国試はしっかり勉強すれば大丈夫! 薬学部での勉強や実習
– 薬学部では、どんな流れで勉強するのでしょうか。
Nさん:6年制だと、
1〜4年目が座学と実習
5年目は研究室と実習
でした。
6年目になると少しゆとりができるので、研究室の卒論を調べられました。
4年制の時は夏休みや春休みも実習でしたね。
– 実習が多くて大変そうですね……。中でも大変だったことは何でしょうか。
Nさん:一番大変だったのは国家試験ですね!
当時は8割から9割程度の合格率があったのですが、一発勝負なのでメンタル的に追い込まれました。
今は6割後半から7割ぐらいの合格率だと思うので、もっと大変じゃないかな。
– 国試はやはり難しいのでしょうか?
Nさん:ちゃんと勉強して受ければ受かる試験ですね。
はじめて見る問題が出題されるので、模試や過去問をやっていても、内容をしっかり理解していないと解けない問題構成になっています。
でも、普段からちゃんと勉強していれば解けます。
価値観も似ている、同じ「薬剤師になりたい」という人達と一緒に頑張れるので、モチベーションも維持できました。
私は大学受験のほうが大変でした。
専門に繋がる内容なので、勉強内容そのものは苦ではありませんでしたし。
大学までは受験のための勉強だったと思うんですが、大学に入るとどの学部も専門的な内容になりますよね。
打算ではなく、深く学ぶと楽しくなりますよ。
薬学部の流れと国試 国試の合格率は高い
薬学部の6年制に入ると、
・1〜4年目は座学と実習
・5・6年目は研究室
と、とにかく実習が多いのが特徴。
ちなみに、第106回薬剤師国家試験(2021年2月実施)の合格率は68.66%(出典:厚生労働省)。
大学によって差はあるものの、新卒者の合格率は85.55%なので、しっかりと勉強すれば大丈夫……というのは今も同じのようです。
しっかり勉強して、一発合格を勝ち取りましょう!
薬剤師の就職先 病院薬剤師が花形!
– 薬剤師には、どんな就職先がありますか。
Nさん:花形はやはり病院薬剤師ですね。
病院勤務や調剤薬局、ドラッグストアの他には製薬会社やメーカー、学術方面に進む人もいますね。
男性はメーカー、MR、病院が多いかな……
女性は調剤薬局を選ぶ人が多いです。
時代の流れか、結婚育児出産の両立を考えて、育休や時短が取りやすい調剤薬局にするんですね。
病院薬剤師は給料が安く、夜勤もあるので「過酷そう」と敬遠される風潮にあります。
ドラッグストアも最近は人気です。
ドラッグストアでは薬以外にも店舗経営や人のやりくり、エリア管理もしないといけません。
メーカーで定年後、調剤薬局やドラッグストアに行く人もいますね。
全体的に、仕事を条件面で選ぶ学生が多くなってきた気がします。
6年制と4年制に別れた頃から特に多いかも。
本当は、仕事の魅力や楽しさから選んでほしいんですけど……
3〜5年目、最低3年ぐらいは仕事と向き合うと、薬剤師の楽しさがわかってくると思います。
その頃になると仕事とプライベートも分けられるようになってきますよ。
– 具体的にはどういう仕事をしているのですか?
薬剤師といえど病院や業態によって仕事内容は違いますね。
私は10年間病院薬剤師をしていましたが、そこでは、医師が決めた処方のレシピを元に処方した薬について、患者さんに使ったときの効果や副作用などを伝えたりしていました。
血圧を下げる薬でも、下げ方や効き方、効きの長さなどは違うので。
医師・看護師・栄養士・検査技師・理学療法士などと関わりながら、患者さんのために薬剤師としての意見を持って、ディベートしていました。
また、直接患者さんとコミュニケーションを取ったり、退院後に地域のかかりつけ薬局と連携するのも病院薬剤師の仕事です。
厳しそうなイメージのある大学病院の薬剤師ですが、とても楽しかったですよ。
一人ひとりが自立し、支え合っている職場でした。
仕事と家庭の両立 薬剤師は時短勤務がしやすい!
– Nさんはまだ小さいお子さんがいらっしゃるのですよね。
毎日どのように過ごしているのか、1日の流れを教えていただけますか?
Nさん:はい。
6:30 | 起床・準備 |
7:30 | 朝食 |
8:00 | 保育園へ子供を連れて行く。そのまま出勤 |
17:00 | 仕事終了。その後お迎え |
18:30 | 夕飯 |
19:00 | お風呂・子供と遊ぶ(パズルや絵本など) |
20:00 〜20:30 |
子供の寝かしつけ |
毎日はこんな流れです。
家事などはその後に行っています。
友人には、9−18時で勤務して、その後残業してからお迎えの人もいます。
時短になると任せられない仕事が出てきますし、キャリアが途絶えてしまうこともあるので。
ただ結局、自分の気持ちの面で仕事を他人に任せられるかどうかが重要かと思います。
ワンオペ育児は疲れますし……
病院も、昔は「結婚したら辞める」という雰囲気がありましたが、今は育休を取って復帰する人も増えてきています。
薬剤師は、全体的に時短が長く取れる職種だと思いますよ。
小学校に上がるまでは時短を取れることがほとんどです。
だから4〜5歳目ぐらいで2人目を産み、上の子が小学校に上がるタイミングで2回目の時短を取る人もいます。
育児も仕事も真剣だから、両立させるためにそういう選択をするんですよね。
医療系は、もし一旦辞めても子育てが終わってから再開できるので、女性にとっては強いと思いますよ。
– 休みなどはどのようになっていますか?
Nさん:薬剤師は、シフトで働いている所が多いと思います。
2連休が欲しい場合はメーカー勤務になるかな。
大学病院で働いていた時は、日曜日とどこかが休みの場合が多かったですね。
当時は当直中の人から相談の電話が来ることもあったので、旦那の仕事への理解がないと辛いかもしれません。
薬学部を目指す受験生へ 先を見据えて受験しよう
Nさん:私が受験した当時は薬学部激戦時代でした。
なので、今思うと「もっと広い視野で受験に臨めばよかったな」と思います。
そうすればもっとワクワクできたんじゃないかな。
だから、皆さんも先の仕事や中の人のことを知って受験して欲しいと思います。
大学に入るのはゴールじゃないので。
あと、薬剤師は相手ありきの仕事なので、コミュニケーション能力が大事になってきます。
患者さんのことを忘れないようにしてください。
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。