医学部でも留学できる!自主性が身に付いたハワイでの臨床実習

医学部対策の勉強法

「将来は英語論文を執筆したい」

「海外の学会で発表して国際的にも活躍したい」

「海外の医療を学んで視野を広げたい」

せっかく医学部に入るなら、将来は英語を使って国際的に活躍する医師になりたい人も多いでしょう。あまり知られていませんが実は多くの大学で、研究や臨床実習での短期留学プログラムを打ち出しています。

私は6年生の選択実習の期間を利用し、ハワイの病院で1か月臨床実習を行いました。今回はその体験も紹介しながら、医学部での海外留学を目指すために必要なことをお伝えします!

どの大学も留学プログラムを増やしている

医師になると、英語論文に触れたり、海外の学会で発表したりする機会があります。さらに、日本国内に住む外国人はますます増えており、医師も英語で診察する能力が求められています。

留学によって、学生のうちに英語を学べたり海外の価値観に触れたりする機会はとても貴重です。

たとえば1年生で留学すると、さまざまな交流を通して医学に限らず広い価値観を学べます。医学部1年生向けのプログラムは少なく、自分で夏休みの語学留学などのプログラムを探す人が多いようです。

3~4年生で研究室所属する際に、つながりのある海外の研究室に派遣してもらえる場合があります。海外の研究室の様子がわかり、さらに研究者とのつながりを作ることができるのが魅力です。

5~6年生の臨床留学では、学んだ医学知識を生かして海外の医師や医学生と交流することができます。場所によっては、英語で治療方針を立てたり、プレゼンしたりとかなり実践的な力を身につけることができます。

私の通う金沢大学では、1年生、3年生、5年生、6年生とさまざまな海外研修プログラムがあります。大学全体としてグローバル化を目指す方針なので、これからも留学プログラムは増えるでしょう。

数々の医学部が海外交流プログラムを設けているなか、5つの医学部をピックアップしてご紹介します。

名古屋大学ー国内の医学部の中でいち早く臨床留学プログラムを始めたー

5年生の臨床実習IIの一環で最大3か月、海外の提携大学に派遣しています。

名古屋大学では、他の医学部にさきがけ、1993年に臨床留学プログラムを開始しました。現在では、アジアや北米、ヨーロッパなど17の大学と提携し、学生を派遣しています。

具体的な提携先はこちらをご確認ください。

国際医療福祉大学ー全員を対象とした海外研修プログラムがあるー

英語教育を重視している国際医療福祉大学では、5年生の3月までにUSMLE Step1(アメリカの医師免許のひとつめの試験)の受験を推奨しています。

1-3年次の「国際医療保健学・海外医療体験」という授業では全員を対象に、2週間海外に行き、その国の医療事情を学びます。なんと24の国と地域で計47の大学や医療機関と提携しており、国内の医学部のなかでは随一の提携数です。

6年次の臨床実習では、4週間以上の期間、海外で実習を行うことができます。

6年間のカリキュラムや具体的な提携先は、こちらのウェブサイトに書かれています。

東京医科歯科大学ー世界中の最先端の研究室と提携しているー

4年次に約半年もの間、海外の最先端の研究室に所属し、実験などを行うことができます。提携先には、マサチューセッツ工科大学、マヒドン大学、ハーバード公衆衛生大学院などがあります。

2019年度には29名の学生が派遣されました。学年の約3分の1が海外の研究室に所属していることになり、派遣プログラムとしては最大の規模を誇ります。

6年次にも、海外で臨床実習を行えるプログラムがあります。提携先などの詳細はこちらをご確認ください。

横浜市立大学ー海外での臨床実習の提携先を拡大しているー

ブリティッシュコロンビア大学やハワイ大学をはじめ、2023年現在では14の大学と臨床実習の提携を結んでいます。2019年度は27名が海外で臨床実習を行いました。

これからも海外提携先を拡充する方針です。大学のウェブサイトに最新の情報が記載されています。

広島大学ー最大4か月間海外の研究室で学べるー

4年次の研究室配属で最大4か月もの間、海外の研究室で実験などに取り組むことができるプログラムがあります。ウェブサイトには、スタンフォード大学や国際原子力機関(IAEA)などの、最先端の研究室の名前が記されていました。

また6年次には、最大2か月にわたり海外の病院で臨床実習できるプログラムもあります。

成績優秀者には10万円ほどの支援があるそうです。プログラムの詳細はこちらをご覧ください。

検索してみると、ほとんどの医学部で何かしらの海外留学プログラムがありました。必ず大学のウェブサイトから最新情報をチェックしましょう。

臨床留学で海外の医療を学ぶ

海外の病院で1か月ほど臨床実習を行います。英語を使って海外の医師をディスカッションを行うので、高い英語力が必要です。

行く先の医療機関によって実習内容は異なります。

主に見学を行うところや患者の問診をとるところ、上級医に治療方針をプレゼンをするところがあります。

私は6年生の4月にハワイで臨床実習を行いました。ハワイの比較的小規模な総合病院の内科(internal medicine)で1カ月間実習しました。かなり実践的な実習だったので、その内容を詳しく述べていきます。

文献検索の姿勢が身に付いたハワイでの実習

学生も治療計画を立てることが求められる

日本での一般的な臨床実習は「見学(Observation)」が中心です。指導医の書いたカルテを読み込み、その治療方針を理解するのが学生の仕事です。

一方、アメリカでは医学生もチームの一員として、自分で患者の診察に行き、治療計画を立てます。それをレジデント(研修医)に発表しフィードバックをもらい、さらに上級医に発表します。退院後の施設との調整まで行っていました。

高校生の時に英検1級を取得し、英語にはある程度自身があったのですが、アメリカの医師たちの会話についていくのがかなり大変でした。例えば、呼吸器を表す”respiratory”は「レスピラトリー」と言うのかと思っていたら、みんな「レスピトリー」と言っていました。それに加え、話すスピードが速かったり略語を使っていたりして初めの1週間は全然理解できませんでした。

1日のスケジュールはこんな感じです。

6:00  病院に到着し、チームの患者のカルテチェック

7:00  レジデントに付いて患者の回診(セミナーがある日も)

8:00  チームラウンドで薬の調整や治療方針を議論する

9:00  上級医(ホスピタリスト)に患者の状態や治療方針をプレゼンしフィードバックをもらう

10:00  ICU(集中治療室)でラウンド、実際の症例からICUの管理について議論する

11:00  治療に関連する資料や論文を調べる

適宜昼ご飯を食べ、セミナーがあったり資料を調べたりする。

午後3時頃に帰宅できます。4日に1度、チームが救急患者を受け入れる当番の日(オンコール)があり、その日は午後6時まで病院で急患のコールを待っていました。

アメリカの病院はとにかく朝が早いです。毎日6時に病院に行っていましたが、すでに入院患者さんの血液検査の結果が出ていました。

アメリカの多くの病院では、夜中の3時過ぎにバイタル測定(血圧や体温、呼吸数など)を測り、4時頃に採血を行うようです。

日本では自分で治療方針(アセスメント&プラン)を立てたことがなく、いきなり自分で考えることになり、資料や論文、ガイドラインなどを調べ時間をかけて方針を考えました。

そうやって時間をかけて考えたものをレジデントにプレゼンすると、たくさん問題点を指摘され、何度も心が折れそうになりました。結局、チームのレジデントが作ったカルテを上級医の前で読み上げるだけのプレゼンをしてしまい、とても悔しかったです。

辛いときは一緒に実習していた他大学の日本人学生と励まし合いました。

日本に帰って来てからも、自主的にガイドラインや論文を検索して治療方針を決めるようになりました。文献を検索する習慣がついたのは大きな収穫です。

観光も海外実習の醍醐味

休日は週に1日しかなかったので、貴重な休日を登山したりビーチに行ったりして満喫しました。雄大な景色を見ると、日頃の疲れやストレスが吹き飛ぶようでした。

世界的なインフレと円安のせいで、食べ物はとても高かったです。鳥インフルエンザの影響もあり、スーパーでは卵12個がなんと8ドル(1,134円)で販売されていました。

ハワイはアジア系住民が多い島です。ホノルルを観光していると、至るところに日本式の神社や寺、中国式の寺院、ヒンドゥー教の寺院などがありました。病院の近くにチャイナタウンがあり、早く実習が終わった日などはよく広東料理を食べに行きました。

病院に来る患者さんのほとんどがアジア系でした。日本語や中華系の言語が通じる患者さんが来ると、よく通訳を頼まれました。

さまざまなアジア系住民が、るつぼのように混ざり合っている環境がとても楽しかったです。

アメリカの医学生はレベルが高かった

アメリカで医学部に入学するには、まず4年制の大学を卒業することが必要です。その後クリニックなどでアルバイトをして経験を積みながら、メディカルスクール(医学部)合格に向けて勉強するのが一般的だそうです。

アメリカの医学生はメディカルスクール入学前から、医療現場で経験を積んできています。

そして医学部3~4年生になると、病院では主治医チームの一員として治療計画を作ります。日本の初期研修医のイメージに近いかもしれません。

留学のチャンスをつかむために必要なこと

英語力

何といっても英語力が一番重要です。特に海外での臨床実習を考えている人は、早いうちから医学英語の単語を暗記しておく必要があります。

一般的には、USMLE(アメリカの医師免許の試験)Step1の教材で英単語を覚えます。”First Aid For the USMLE” や “Rx”, “Uworld”といった教材がおすすめです。

同時に、英語でプレゼンする練習もしておきましょう。アメリカの医学生が上級医にプレゼンしている動画があります。病院ではおよそこの流れで上級医にプレゼンをします。

医学に関係する英語力とは別に、一般的な英会話の目安としては、TOEIC900点くらいが必要だと感じました。このレベルでなくても留学はできますが、会話についていくのがもっと厳しくなります。

お金の準備

海外で1か月実習を行うとなると、およそ50万円必要になります。

大学ごとに様々な奨学金制度がありますが、良くても飛行機代くらいしか出ません。海外研修を考えている人は、低学年の内から計画して貯金する必要があります。

また、国や民間の奨学金に申し込む人もいます。

つながりを作っておく

大学によっては、留学の情報が一部界隈でしか出回らず、知らないうちに留学の枠が埋まってしまうことがあります。

医学英語の先生や、留学に興味のある同級生や先輩と仲良くしておくことで、有益な情報を手に入れることができます。

医師も国際化が求められる時代に

キャリアアップのために研究留学する医師は少なくありません。

また、これから日本国内で外国人の診療をする機会も増えるでしょう。

機会があればぜひ海外研修に行ってみてください。異なる視点から医療を学ぶことで、医療者としてより成長することができます。

ピックアップ記事

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

【2023年版】 現役医大生が選ぶ医学部予備校おすすめTOP5