杏林大学3年生の現役医学生に聞いた実習や勉強のリアル
医者になるためには、大学受験をして医学部に合格することはもちろんですが、その後6年間医学部で勉強しなくてはなりませんよね。
しかし、「実際に医学部に入って、どんな授業を受けているのか」ということは意外と知られていないもの。
今回は、杏林大学の現役医大生である坂本さんにインタビューを行い、医学部の授業や実習から杏林大学医学部ならではのカリキュラムまで、詳しくお伺いしました。
【お話を伺った方】
坂本 愛香(さかもと あいか)さん
杏林大学医学部 3年生
出身:東京(國學院大學久我山高等学校)
現役合格
Contents
杏林大学医学部の授業ってどんな感じ?
まず初めに、「杏林大学での授業」について。
気になる「解剖実習」についても、具体的に教えて下さいました。
1年次の後期から医学の授業が開始
医学部ではどんな授業が行われているのですか?
1年次の前期は基礎科目を学びます。
生物や化学などの医学とは直接関わらない科目もあり、物理の実験も行いました。
文系の授業は、4年生まで必修の英語だけです。
1年次の後期になると肉眼解剖学の講義が始まりますが、代謝やホルモンの種類など暗記量も多く大変でした。
しかし、腎臓内科や内分泌など、上の学年で学ぶ臨床科目につながるため、とても重要な内容です。
医療者としての自覚が芽生えた解剖実習
印象に残っている授業はありますか?
数ヶ月続いた解剖実習です。
具体的に何をするのか分かっていなかった授業の前は怯えていました。
授業では、自分が解剖実習を行うテーブルがあらかじめ指定されています。
先生の指示で袋を開け、実習が開始されました。
ご遺体はホルマリンで固定されているせいで皮膚の質感も生体とは異なっており、実際の人間とはかなり見た目が違っていました。
そのせいか、最初はSF映画のようであまり現実味を感じられませんでした。
解剖実習では実際にどんなことをするのですか?
最初に生前のメッセージや死因、亡くなった際の年齢などの基本情報が説明されました。
その後、心臓などの部位をよく見るために解剖していきます。
実際に自分の目で臓器を見ることで、理解を深めることができました。
最終的には各部位が全部ばらばらになってしまうのですが、それらを元あった場所にきちんと戻してから埋葬を行います。
献体してくださった方が生前に使っていたものなども一緒に埋葬するため、この段階になると一気に現実味を帯びてきました。
お孫さんがくれたクマのぬいぐるみなどがあって生前の人となりが想像され、医療者として強い責任感を感じました。
また、献体された方々などの冥福をお祈りする慰霊祭が年に1回開催されています。
慰霊祭には学年全員が出席し、1人1人献花を行います。
この場にはご遺族も出席されるため、更に実感がわきました。
杏林医学部の病院実習の具体的な内容は?
5, 6年次ではいよいよ病院実習
今後は臨床実習があるんですよね?
はい。5年生で前期研修(Bed Side Learning、通称ポリクリ)、6年生ではより実践的な後期実習(クリニカルクラークシップ。通称クリクラ)が行われます。
杏林大学医学部のカリキュラムでは、スーパーローテーションというのがあり、1年かけて病院内の全部の科を回ります。
そして、その後6年次では、5年次に進むことを決めた課のみで1年間、医療チームの一員として実際の診療に参加します。
実習を海外で行うこともできる
海外で実習を受けることもできるんですよね?
杏林大学医学部では、6年のクリニカルクラークシップ時に海外で実習を行うという選択もできます。
イギリスやアメリカなどの病院が提携しているんですよ。
私も元々海外の大学に行きたかったこともあり、視野に入れています。
「グローバルに活躍できる医師」を育成するための杏林大学独自のプログラムひとつ、「海外クリニカルクラークシップ」については上のリンクから公式ホームページをご覧いただけます。
海外での実習では英語は避けられない
海外クリニカルクラークシップに向け特別な英語の勉強などしていますか?
坂本さん:私は、勉強感が強いやり方が苦手なため、特にTOEIC・TOEFL対策の問題集などはしていません。
しかし、医学英語は日常会話に出てこないため、どうしても覚えなくてはなりません。
病気の略称などは英語の頭文字を取ってローマ字3文字にすることが多いため、日本でも使われる場面が多いですね。
これからの進路は?
今後、何科の医師になりたいなどの希望はありますか?
このまま、ストレートに大学を卒業するとしたら、前期研修時に全部の科を回ることになります。
私は、最終的にどのような方向に進むかを、その時に決めようかと思っています。
というのも、これまで自分に身近でなかった病気はまだ馴染みがないからです。
私は大きな病気をしたことがないので、腎臓や心臓の病気はピンとこないところがあります。
逆に、自分がかかった疾患、例えば皮膚科や小児科、インフルエンザなどの感染症についてはイメージが湧きやすいですね。
女性医師と男性医師で待遇に差はある?
続いて、医学部合格を目指すの女性の多くが気になる「女性と男性で扱いは異なったりしないのか」「『女性だから』という理由で不利になったり、仕事を続けるのが難しくなったりしないだろうか」について、坂本さんに伺いました。
女性の活躍の問題は社会全体が抱えている問題と共通
「女性だから」という理由で扱いが異なることはありますか?
大学の中で女性差別を感じたことはありません。
しかし、女性であるゆえにキャリアを考えなければならない悩みはあります。
そもそも医学部内の男女比率の時点で女子のほうが少ない割合です。
また、部活でも上の役職に就いているのは男性の方が多いと思います。
ですから、「女性医師だから」「医学部に通う女性だから」特有の悩みがあるわけではなく、普通の企業に務める女性と共通した悩みを持っているはずです。
以前に講義で、女性は結婚や子育てが理由で仕事に融通が効きにくいので、男性より活躍が厳しい面があると聞きました。
これも、女性医師だからではでなく、社会全体が今抱えている問題と同じです。
医師であれば退職という選択肢は難しくなりますので、いつ結婚するか、子供を持つかというタイミングには気を使うでしょう。
研修医のうちに結婚したら、忙しい上に経済的に苦しい状況なので大変ですが、中にはそれまでに結婚する人もいます。
選択肢は多いがワークライフバランスは難しい
医学部志望の女性に伝えたいことはありますか?
医師は安定職ですし、様々な科から自分の進路を選べます。
研究職もあって選択肢は広いため、キャリアを求めている人にはとても向いているでしょう。
しかしその一方、仕事と家庭を両立させるのが難しい面もあります。
ですから、いい頃合いで結婚したり家庭に入りたい、と考えると、キャリアを追うのは難しくなってしまうかもしれません。
苦労が多かった医学部受験
最後に、医師になろうと思ったきっかけと、杏林大学以外の受験校についてお伺いしました。
どのような観点から併願校を選定したのでしょうか?
医師を志した理由
医師になろうと思ったきっかけはなんですか?
母が小児科医だったことと、小学校が私立だったことが大きいと思います。
と言っても最初から医者になりたかったわけではなく、はじめは心理学に興味がありました。
併願校は偏差値を基準に選定
どの学校を受験しましたか?
第一志望は横浜市立大学です。
センター試験(現在の共通テスト)の社会科目が政治経済だけで受験できたからですね。
その他私大は片っ端から受けました。といっても、慶応のような偏差値の高いところは受けていませんが……
大体偏差値67.5目安ですね。
杏林大学と横浜市立大学以外にも、埼玉医科大学・東京医科大学・東邦大学・昭和大学を受けました。
結局、横浜市立大学は理系科目だけでセンター試験の点数90%は必要だったところ、3科目で89%、5科目では80%代前半となってしまったので杏林に切り替えました。
杏林大学はセンター利用型で受験しています。
塾講師などはしていない?
合格後、その経験を生かして塾講師などしていないのですか?
周りの学生には塾講師をしている人は多いですね。
ただ、私は受験を楽に終えられたわけではありません。
受験生が勉強に苦しんでいる姿を見ると、自分が辛かったときのことも思い出しそうなので、塾講師はやらないことにしています。
受験生へのメッセージ
最後に、受験生にメッセージをお願いします。
「医師になりたい」という強いモチベーションがないと医学部で勉強するのは厳しいかもしれません。
というのも、大学入学後も受験期と勉強の大変さは変わらないからです。
医学部に合格したから後は楽、ではなく、中に入ってからも忙しいことを覚悟していたほうがいいでしょう。
受験に関しては、基礎が大事だということを後から思い知りました。
難しい問題に手を出そうとするのではなく、教科書レベルのことをしっかり身につけることが大事です。
入学後こそ大変なのは医学部の宿命
今回は、現役医学生である杏林大学3年生の坂本さんにお話を伺いました。
解剖実習でを通して「医療者としての強い責任感を感じ」たと教えてくださった坂本さん。
受験生時代の志望校選定から杏林大学ならではの海外での臨床実習、将来の女性医師としての考えについてなど、非常に貴重なお話を伺うことができました。
医学部受験を考えている受験生の方は、医学部に入ってからの生活や、将来のキャリアについてイメージが掴めたのではないでしょうか。
杏林大学の公式ホームページは以下のリンクからご覧いただけます。
神奈川生まれ、東京育ちで、東京医科歯科大学医学部に在学中のライター。
バックパッカーとして世界を旅したいという夢を持つ。
服の好みが数ヶ月単位で変わることが悩み。
受験生時代の得意科目は古文と生物。普段は優柔不断だが、物理から生物に鞍替えすることは1日で決断した。
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