医学部で女子差別があったって本当?
女子が入りやすい大学はどこ?

医学部入試情報

2018年、入試において、東京医科大学を始めいくつもの医学部が女性や浪人生の点数を下げたり、卒業生の子女に加点していたことが明らかになりました。

以前より医学部志望者や塾では囁かれていた「医学部入試における男子優遇説」。
今回の事件でそれが明るみになり、「やっぱり」と思った人も「そんな……」とショックを受けた人もいるのではないでしょうか。

 

そして気になるのが「今も女性差別はあるの?」ということ。

 

今記事では、医学部の女性差別問題について説明、実態の調査をします。

・そもそも女性差別問題って何?
・今もまだ医学部入試において女性差別はあるの?

「医者になりたい。でも男子より頑張らないといけないって本当なの?」と不安な医学部志望の女子、必見ですよ。

 

医学部の女子差別問題とは?

 

医学部の女子差別が発覚した発端は、2018年に文部科学省の官僚が自分の息子を東京医科大学に裏口入学させたことでした。
文科省の役人が息子を合格させる代わりに、文部科学省の行う私立大学支援事業に東京医科大学を決定したのです。

 

この裏口入学問題を調べる過程において「入試が公正に行われていたか」の調査も行われ、その副産物として「女性や浪人生に対して不当に一律減点をしていた」ことも明らかになりました。

 

具体的には、「100点満点の小論文に0.8を掛け、現役〜2浪までは+20点、3浪は+10、女性と4浪以上は+0」されていたとか。(参考:衆議院質問
女性の場合100点をとったとしても80点扱いになり、現役男性の75点と同じとして扱われるわけです。

 

その後厚生労働省が全国81大学を調査した所、複数の大学で女性や浪人生、卒業生の子女に対しての得点調整が明らかになりました。
不適切、もしくは不適切な可能性が高いとされたのは81校のうち10校でしたが、得点調整の疑惑のある大学は20〜30校にのぼったとされています。

 

昔から「医学部は男子有利」は常識だった!

 

2018年に明るみに出た「医学部入試不正問題」。

 

しかし、医学部受験生の間や予備校などでは、以前から「女子と浪人は減点される」「私大は親が医学部の卒業生だったり、知り合いがいたりする場合多額の寄付をすれば入れる」と言われていました。

そのため、女子や多浪は特に勉強を頑張らないと合格できないのが『常識』とされていたのです。

 

こちらのインタビューでも「女子は高い点を取って当たり前」と思っていたという話がありますね。

 

参考として、少し古いですが医師国家試験の男女別合格率を見てみましょう。(クリックで拡大します)(引用:厚生労働省 報告書

毎年男性に対して女性の合格率が2〜3%ほど高い様子が分かると思います。
男子より女子のほうが毎年勉強を頑張っている、というのはおかしな話なので、そもそも入り口の時点で平等に採られていなかったと考えるのが自然でしょう。

 

なぜ女子が差別されたの?

では、女性が入試で差別される理由は何でしょうか。
それには様々な理由が挙げられます。

 

《女子を医学部にあまり入学させたくない理由》
・妊娠や出産で離職したり仕事をセーブしたりする可能性が高い
・地域枠で採用しても「夫の転勤」などの理由でその地域に残らない可能性が高い
・男子に比べて体力がない
・男子に比べて根性がない

後半2つはさすがに「それはちょっと……」と思う人が多いかもしれませんね。

 

体力は女性の方が男性に比べて劣っていることが多いかもしれませんが、あくまでそれは一般論であり、平均を取ればそうなる、という話です。
実際には外科や救急で活躍する女性医師もおり、男性でも体力のない人はいます。
体力を気にするのであれば、一律で女性を減点する必要はないはずです。

 

では、前半の2つ、結婚や家庭の理由などで転職・離職しやすいというのはどうでしょうか。
「私は結婚しないから関係ない」「実際にそうなんだから当然かな」などの意見があるでしょう。

 

実は、女医向けのWEBマガジンで行われたアンケート調査でも、65%が「理解できる」「ある程度は理解できる」と回答しています。
(参考:株式会社エムステージホールディングスのプレスリリース

 

調査結果を見てみると、女医本人も「悔しいけれども、実際に男性ほど働けないのだから仕方ない」と考えていることが多いようです。

 

妊娠や出産に伴って他人に迷惑をかけてしまったり、当直に入れなくなったりする女性は多いもの。
働き続けることを選んだとしてもいわゆる「ゆるふわ女医」にならざるを得なくなる場合もあります。

 

つまり、どちらかというと能力的に女性に問題があるのではなく、働き方として男性より女性の方が医師としての貢献度が低いことが問題、とみなされているのです。
結婚したり子どもがいたりしても仕事に影響がないため、優先して男子を入学させよう、と医学部は考えたのです。

 

女性差別は医学部だけの問題ではない

しかし、「女性が医学部の入試で差別されるのはなぜ」というのは、実はそんな表面的な問題ではありません。
「そもそも日本の社会において、育児や家族の世話は女性の仕事とみなされることが多いから」ということが本当の答えになるでしょう。

 

妊娠や出産で産休、育休を取るのが「女性だけ」の前提なのはなぜか。
子供の体調不良などで職場に迷惑をかけるのが「母親前提」なのはなぜか。
夫の転勤で、「妻が」仕事をやめてついていくことが当たり前とされるのはなぜか。

 

今の日本においては、育児や家庭の都合による負担を被るのが女性前提にされています。
男性は育休などを取りたくても取りにくい状況にありますし、女性は仕事を頑張りたくとも「母なんだから」とキャリアを犠牲にするしかない状況になりがちです。

そして、産休や育休、時短などをバックアップする体制もまだ整っていないことが多いもの。

 

そのため、女性が減らさざるを得なかった分の仕事は当然職場に残る男性や独身、あるいは子どものいない女性に降りかかります。
結果として「女性は男性に比べて働かないから医師にさせたくない・採用したくない」と思われたり、「仕事をしたくてもできない女性」「やりたくもない人の仕事をやらされる女性」の対立が生まれたりしてしまうのです。

 

今も医学部入試で女子は差別されている?

 

医学部志望の女子が一番気になるのが「私も差別されるかどうか」という点ですよね。
今でも医学部入試で女子は減点されているのでしょうか。

医学部不正入試問題を受け、文部科学省が2019年と2020年に調査したデータを見てみましょう。

(クリックで拡大します)

 

(引用:医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る調査について | 文部科学省

 

文部科学省は不正入試問題のあと、女性や浪人など合理的でない理由での差別を禁止する全学部共通ルールを制定しました。

 

しかし、このデータを見てみると、大学によってかなり男女の合格率に差があることが分かります。

 

全体としては、男性の方が合格率は依然高めと言えるでしょう。
しかし、女子のほうが合格率が高い大学もありますね。

 

男子の合格率が高いからといって、その大学が女子差別をしている……とは一概に言い切れません。
ですが、医学部を目指す女子は「女子の合格率が高い、あるいは男女での合格率にあまり差がない」学校を選ぶと受かりやすくなるでしょう。

 

・福井大学
・三重大学
・徳島大学
・札幌医科大学
・和歌山県立医科大学

 

これらの大学が狙い目かもしれません。

 

性別を理由にやりたいことを諦めるなんてもったいない!

医学部入試において女子が差別されているという悲しい事件があったのは事実。

 

ですが、男女別合格率を見ても、受験生の学力を性別に関係なく審査していると思われる大学は数多くあります。
そのため、「どうせ頑張っても男子より低く評価されるんだ……」と悲しむことはありません。
しっかりと学校研究をして、自分に合った大学を見つけることが重要になります。

 

また、実際に働く上でも、徐々にですが、働きやすい環境の病院や、パートナーとしての女性のキャリアを自分と同様に大切に考えたり、育児や介護などを積極的に分担する男性も増えてきています。

 

男性と女性が同じように働く社会になれば、「男性だから」「女性だから」と言われることも少なくなってくるでしょう。

自分の夢に向かって、頑張ってくださいね!

 

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