獣医学部と医学部の違いを徹底解説!!
〜受験難易度や入学後、卒業後のキャリアまで説明します〜
医学部と同じ6年制で、やはり実習があったり国家試験があったりと似たようなカリキュラムの獣医学部。
獣「医学」部という名前のため、何となく「医学部と似たようなことをしているのでは?」「医学部に偏差値が届かなかったら獣医に行こうかな」と考えてしまう人もいるのですが、それは大きな間違い。
獣医学部は医学部とは全く違った性質を持った学部なので、安易に進学すると後悔してしまうでしょう。
今回の記事では、獣医学部がどんな学部か、偏差値や入試の特徴についても説明します。
(記事中で利用しているの偏差値・共通テストボーダーなどは河合塾を参照しています)
Contents
獣医学部とは?
獣医学部と聞くと、「『動物のお医者さん』を養成する学部」と考えてしまいがちですが、実はメインとして学ぶのは犬猫ではなく牛や豚、鶏などの産業動物。
動物の病気や治療法などはもちろんですが、例えば産業動物の品種改良や衛生管理、寄生虫などの公衆衛生などについても学ぶ学部です。
獣医学部のカリキュラムは、大きく分けて以下のようになっています。
・1〜2年次:基礎獣医学(獣医学概論・動物衛生学など)
・3〜4年次:応用獣医学(獣医外科学実習・獣医疫学など)
・5年次:実習
・6年次:卒論と国家試験の準備
6年生の2月、あるいはそれ以降に獣医師国家試験に合格することで獣医師の資格が得られます。
国家試験の受験資格を得られる、獣医学を学べる学校は全国に17校あり、そのうち11校が国立。
定員は、全校合わせても1000人ちょっととかなり狭き門になります。
獣医学部と医学部の理念の違い
獣医学部と医学部では、ヒトについて、あるいはそれ以外の動物について医学を学ぶか、という点のみが異なっているのではありません。
医学部(医学科)は、簡単に言ってしまえば「人間の病気を治す・治療のための研究をする」人間を養成するのが目的です。
人の体の仕組みや病気・ケガなどに対する治療法などについて授業では多くの時間が割かれ、実際にほとんどの入学者が臨床医師の道に進みます。
しかし、獣医学部は「ヒト以外の動物のケガや病気を治す」だけではなく、「産業動物をいかに管理・活用するか」といった環境衛生・食品衛生に関わる人材を育成することも大きな目的としています。
つまり、動物の感染症や公衆衛生学など、直接動物の治療に関わらないことにも獣医学部では多くの時間が割かれるのです。
名前は医学部と似ていますが、そもそも獣医学部は農学系統の学問。
そのため、「畜産」を学ぶ学部という毛色が強いのです。
獣医学部の受験難易度と偏差値
獣医学部がある学校は全国に17校しかない上、どの学校も定員が少ないため、獣医学部の受験難易度は高くなります。
「医学部医学科の次に、獣医学部獣医学科は難しい」と言えるでしょう。
偏差値は最高で67.5(東京大学・東京農工大学)〜最低でも50.0(酪農学園大学)。
定員が少ないため、どこも倍率は6〜8倍になります。
医学部と違い、理科1科目、数Ⅲなしで受けられる大学が多いのも特徴です。
国公立の獣医学部は共通テストが勝負!!
国立の獣医学部は最低でも共通テスト78%、偏差値60がボーダーになります。
東京大学・北海道大学を除く国公立大学では共通テスト比率は1:1以上のため、多くの大学の場合、85%は共通テストで取りたいところです。
中でも「岩手大学・岐阜大学・鳥取大学・宮崎大学」は9:4、「山口大学・鹿児島大学」は5:2と高比率。
二次試験での挽回がかなり難しいため、共通テストでいかに高得点を取るかの勝負になります。
私立の獣医学部受験の特徴
私立の獣医学部は、国公立に比べて少ない科目(英語・数学1A2B・理科1科目)で受験できるのが特徴。
奇をてらった応用問題などは出題されず、「基本をしっかり理解しているか、間違えないように問題を解けるか」の試験になります。
合格最低点は各大学、各科目75%以上が目安。
かなり高得点を取らないと合格が厳しいタイプの入試になります。
私立大学の場合、入試に必要な科目に集中して勉強できますが、その分学費が高くなる点にも注意が必要です。
学校によりますが初年度学費は250万円程度。
国公立の場合の初年度学費は80万円程度であり、6年間トータルでは1000万円近い差になります。
獣医学部受験と医学部受験は並行できる?
「医学部が無理なら滑り止めで獣医学部」と考え、獣医学部と医学部、どちらも受験することは不可能ではありません。
しかし、実際にそのような受験をする人はほとんどいませんし、あまりおすすめも出来ません。
というのも、「医学部と獣医学部では、キャリアも学べることも全く異なっている」から。
そのため、「医学を学びたい」という思いだけで入ってしまうとギャップを感じる可能性が高くなります。
獣医学部は6年制で実習も多く、医学部と卒業後の進路も全く違うので、医学部と併願するならよほど動物が好きか、公務員になって公衆衛生系に進みたい人などでないと厳しい環境です。
「医学部に行きたい、でも学力が伸びない……」という時は、きっぱり諦めるか、薬学部や看護学部への転向を検討するといいかもしれません。
各大学で特色が大きく異なる獣医学部
志望大学を考えたり、推薦入試を検討したりする場合は、獣医学部は各大学によって「強み」が大きく異なっている点にも注目するといいでしょう。
例えば、北海道大学や日本獣医生命科学大学など、偏差値の高い大学のほうが基礎研究に力を入れています。
岐阜大学では野生動物の研究ができますし、産業動物や循環型農業について学びたいのであれば帯広畜産大学が向いているでしょうし、最近できた岡山理科大学は「家畜や人間と家畜共通の感染症の専門家」に対応することを掲げています。
また、大学によっては相互に連携する「共同獣医学部」が設置されている場合もあります。
《共同獣医学課程のある大学》
・鹿児島大学と山口大学
・岩手大学と東京農工大学
・鳥取大学と岐阜大学
・北海道大学と帯広畜産大学
共同獣医学課程を締結する大学間では、遠隔システムなどで互いの大学の講義を受けたり、実習を受けに行ったりできるようになっています。
都会では伴侶動物、地方では産業動物に偏りがちになってしまいますが、それぞれを得意とする大学が提携することでどちらもバランスよく学べるなどのメリットがあります。
獣医学部卒業後のキャリアについて
「獣医」というとどうしてもペットクリニックのイメージを持ってしまうことも多いと思いますが、実は臨床獣医師として将来働く人は半数ほど。
臨床獣医師にも、犬や猫などの伴侶動物を専門とする小動物臨床獣医師と、牛や馬、豚などを専門に診る産業動物臨床獣医師があるので、実際ペットクリニックの先生になる獣医師は割合としてそんなに多くありません。
それ以外には、国家公務員として検疫業務に携わる、地方公務員として食肉衛生研究所や保健所、動物愛護センターなどで働く、畜産行政に関わるなどの進路があります。
民間では食品会社や、製薬会社などに就職する人が多くなります。
数は少ないですが、動物園や水族館、競馬場などの診療所で働く人も。
給料は就職先によって異なりますが、臨床獣医師になった場合の平均年収は430万円。
日本の平均年収よりは多いですが、その代わり休みが少ない、急患には夜間でも休日でも対応しなくてはならないなど仕事はハードです。
獣医学部は医学部とは全く違う!
獣医学部は医学部とは全く違う性質を持った学部。
そのため、「名前が似ているから」というだけで入学してしまうとびっくりしてしまうでしょう。
獣医学を学べる学校は全国に17しかなく、また定員も少ないため、入試では医学部の次に狭き門になります。
人気の大学は、年によっては医学部より共通テストの合格最低点が高いなんてことも。
獣医学部は医学部と違って、共同獣医学課程はあるものの全国的な共通カリキュラムはありません。
各大学ごとに特色が強く出るため、自分のなりたい方向性が決まっている場合はどの大学に行くべきかをよく見比べてみましょう。
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