【2023最新情報】柔よく剛を制す! 堅実で硬派な佐賀大学医学部

医学部入試情報

本日は、佐賀大学医学部を分かりやすく紹介します。

昭和51(1976)年に、「国立学校設置法の一部を改正する法律の施行」により、佐賀医科大学が開学されました。

そして、2003年に「旧佐賀大学」と「佐賀医科大学」が統合して、新制の佐賀大学となったのです。その意味では、佐賀大学医学部が生まれて間もないだけでなく、「新しい佐賀大学」そのものも歴史は新しいことになります。

現在、佐賀大学には、理系学部としては「医学部、理工学部、農学部」の3つがあります。大学院も整備されていますが、修士課程(もしくは博士前期課程)しかない専攻や研究科も多く、国立大学としては珍しく、研究ではなく、実学や実践としての医学に力を注いでいます。旧帝大が研究重視路線であるのと対照的です。

ですが、医学部付属の施設として「地域医療科学教育研究センター」や「先端医学研究推進支援センター」があるのに加え、学内共同教育研究施設が豊富にあり、自然科学、産学官連携、高等教育開発、国際交流推進などが実践されています。内面からも外面からも地方のこじんまりとした印象を受けるのと裏腹に、とりわけ理系分野では充実した環境が整っていると言えます。

重視されるのは生命倫理、国際的視野、地域貢献、社会的責任

医療実践と生命倫理が「地域包括医療」へ

医学部長のメッセージや医学部基本構想のパンフレットにおいて、前提として強調されているのは以下のような点です。

 医学部に課せられた教育・研究・診療の三つの使命を一体として推進することによって,社会の要請に応えうる良き医療人を育成し,もって医学・看護学の発展及び地域包括医療の向上に寄与する。

ポイントは2つあります。あくまでも大学医学部の目標が「社会の要請にこたえる」ことであり、そのために必要である「よき医療人」を育成するミッションがあること。そして、佐賀地域の包括医療、つまり地方医療への貢献を行うこともミッションであること。

したがって、関西圏のエリート国立大学がしばしば強調しているような、「アカデミックな研究姿勢や自己研鑽、学術的教養」といった観点が前面に押し出されていないのが特徴となります。「意識高い系」でない人でも、気兼ねなく、のびのびと勉学できる学風といえます。

ただし、医学科の教育目的は以下のように述べられており、生命倫理、社会的視野、さらには「行間のニュアンス」として全人的医療という側面が強調されています。

医の実践において,強い生命倫理観に基づくとともに広い社会的視野の下に包括的に問題をとらえ,その解決を科学的・創造的に行うような医師を育成する。

さらに、医学科長のメッセージは次のように締めくくられていまして、少子高齢化と過疎化が進み、若い人が大都市圏に流出するとともに医師不足に陥る地方社会の実情に寄り添う姿勢をにじませています。

さらに医師の働き⽅改⾰も始まり、超⾼齢社会にも耐えうる医療提供体制を構築するため、「地域医療構想」が制度化されました。このような医療現場の状況の変化に対して、国全体の動きと佐賀の地域の実状を踏まえて、佐賀⼤学医学部の皆さんと⼀緒に活動していけたらと思っています。

佐賀という地域性を活かした国際化! 地域国際連携も

佐賀大学医学部医学科は、アドミッションポリシー等に代わるものとして、「卒業時学修成果」というものを定めており、「卒業時にはこういう能力を備えていてほしい」という、いわば目標やスローガンを掲げています。

それは、大別すると以下の6つであり、国立大学医学部としては、決して「要求度の高い(demanding)」なものではありません。

プロフェッショナリズム

医学的知識

安全で最適な医療の実践

コミュニケーションと協働

国際的な視野に基づく地域医療への貢献

科学的な探究心

上記の6つを見た時に気づくことは、旧帝大に比べてアカデミックな側面が少ないぶん、「国際的な視野に基づく地域医療への貢献」がしっかりと明文化されていることです。これは、言い換えると「think globally, act locally」であり、また「鳥の目で考え、虫の目で動く」ということでもあります。

これは、国立大学のみならず、早慶MARCHや関関同立といった名門私大でもモットーとして掲げられているもので、かつて私が大学勤務をしていた頃も、著名大学の副学長といった学者たちが懇親会などで盛んに語っていました。

といっても、「think globally, act locally」は、日本の大学のみならず、欧米や東南アジアのアカデミズムも一様に目指しているものです。

でも、佐賀大学独自の特徴は、「国際交流推進センター」があり、いわば「東アジアへの玄関口」に位置する地理的特徴を活かして、韓国・中国・台湾・東南アジア諸国と盛んに学術協定や国際交流を実施している点です。

佐賀大学のサイトは説明文が少なくどちらかと言うと分かりにくいものなので、この記事で噛み砕いて解説をしておりますが、原サイトに目を通すことも重要と考えますので、国際交流センターのサイトを以下に貼っておきます。

国際交流センターの特徴としては、国際交流や学術交流の実施、留学支援に加えて、外国人留学生の受け入れを積極的にサポートしている点です。この点は、旧帝大や大都市圏大学と比べても、かなり進んでいると言えます。

また、医学部としても、アジアの大学医学部や病院と国際交流を推し進めており、特に欧米ではなくアジア圏の大学や病院と交流を深めたいと望む人は、一生モノの絆や縁を得られることと思います。

私の個人的な意見も交えて述べますと、佐賀という地域的特色が濃いからこそ、大学が中心となって「地域的な国際化」や「地域国際連携」を実践していく事が可能です。とりわけ、アジア諸国の地方(田舎)の医学部や病院と協定を結び、地方同士の国際的な結びつきを強め、医療や医学研究のローカルな還元を国際的に発展させるならば、佐賀地域の医療発展や経済発展にもつながります。

佐賀大学医学部の国際交流については、以下のページをご覧ください。

社会的責任を重視し、社会に対して成果を上げることが目標

追記になりますが、「学修成果」で冒頭に掲げられている「プロフェッショナリズム」について、以下のように細目が掲げられています。患者のことを第一に考えるという点のほかに、「社会的期待」についても述べられています。

医療と社会とのつながりを重視し、社会の中で要請にこたえて成果を上げていく医療人の育成というのが、佐賀大学医学部の特長の一つです。入試データからは読み取れない点と思いますが、ぜひ医学部を志す高校生・受験生に知ってもらいたい点です。

佐賀大学医学部医学科の卒業生は,卒業時に医師の職責を理解し,患者中心の医療を推進すべく行動できる。

1. 医師の職責を理解し,倫理的・法的な規範に則った行動をとることができる。

2. 患者や家族の価値観と権利を尊重した患者中心の医療を推進できる。

3. 患者のプライバシーを守り,利益相反の生じる可能性に配慮して職務を遂行できる。

4. 医療人への社会的期待を理解し,誠実で責任感のある態度で行動できる。

5. 自らの実践を省察し,課題の発見と改善に努める自己主導型学修の習慣を身に付けている。

また、佐賀大学の学部全体としても、「地域への参画」と「社会的責任感」がモットーとして掲げられており、医学部と共通している佐賀大学の特徴の一つとなっています。裏を返せば、大都市圏が好きな人や、自分の地元への愛が強く佐賀の発展に貢献する気が湧かない人にとっては、少し苦しい環境かもしれません。

倍率は徐々に下がっているが依然として高い偏差値

佐賀大学医学部医学科の偏差値は、パスナビ等によると、ここ数年で62.5となっており、2023年度の最新データも「医学部医学科の前期は偏差値62.5、共テ得点率は80%」となっています。たしかに国立大医学科としては、低めであることに違いありません。(なお参考までに、パスナビでは、慶応大学の看護医療学部の偏差値が60、慶応の文学部と理工学部は65、慶応の経済学部と法学部は67.5,慶応の医学部は72.5です。)

パスナビ等のデータを参照すると、熊本大学、大分大学、鹿児島大学、長崎大学の医学科もだいたい同じ偏差値であることが分かります。

逆に言うと、九州大学の医学科や、宮崎大学の医学科の後期日程は偏差値67.5であり、九州地方の医学科として最もハイクラスになっています。

では倍率はどうなのか、気になりますよね。大学受験生にとって、倍率や合格最低点より偏差値のほうが重視すべき指標であることに違いないですが、やはり気になる点だと思いますので、公式データをもとに一覧表を作りました。

(医学科/前期日程) 志願倍率(四捨五入) 募集人数 志願者数 合格者数
2020年度 5.4 50 272 50
2021年度 4.8 50 242 50
2022年度 4.4 50 232 53

上の表から分かるように、志願者数の減少に伴って、少しずつ倍率は下がっています。医師人気の再来により倍率激化も珍しくない国公立の医学科としては、狙い目であるともいえますが、それでも医学科の偏差値が北海道大学や筑波大学とほぼ同じですので、決して「易しい」とはいえず、専門的かつ十分な量の勉強が求められます。

なお、面接では、生命倫理、医師希望理由など他医学部と共通するテーマのほかに、先に述べた地域包括医療への貢献や、医療人としての社会的責務について質問されることもあることが予想されます。

また、2023年の医師国家試験では、佐賀大学医学科全体の合格率は94.8%であり、新卒生に絞った合格率は95.5パーセントと、きわめてよく健闘しました。自分の学問を追究しながらも、チームワークよく、全員が活発かつ健全に行動している様子が見て取れます。

以上、ちょっと変わった切り口から、佐賀大学の医学部としての魅力に迫ってみました。医師や医療職を志望する皆さんの参考にして頂けたらと思います。

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