医学部の小論文対策で失敗しない書き方4ステップと注意点

医学部受験の直前期対策

医学部受験では、二次試験で小論文を課す大学があります。

小論文だけで合否が決まることはありませんが、本番にいきなり書くのは難しいですよね。

そこで、今回は医学部受験における小論文についてご紹介していきます。

小論文を課す医学部は36校

まず、皆さんの志望校や受験予定校で小論文が出題されるかどうかを確認してください。

調べたところ、一般選抜では国公立・私立大学合わせて36校ありました。

まず、一般選抜で小論文を課す大学について見ていきましょう。

前期で小論文を二次試験に課す国公立大学 2校

群馬大学、奈良県立医科大学

群馬大学は試験科目に英語がないのですが、小論文が英語の学力を問うていると言っても良いくらい、英語っぽいです。

後期で小論文を二次試験に課す国公立大学 8校

秋田大学(一般枠、秋田県地域枠)、東京医科歯科大学、福井大学、浜松医科大学、三重大学、山口大学、鹿児島大学、琉球大学

一般選抜で小論文を課す私立大学(防衛医科大学校を含む) 26校

東北医科薬科大学、国際医療福祉大学、獨協医科大学、埼玉医科大学、杏林大学、慶應義塾大学、帝京大学、東京医科大学、北里大学、昭和大学(I期)、順天堂大学、東京慈恵会医科大学、日本医科大学、聖マリアンナ医科大学、東海大学、東京女子医科大学、金沢医科大学、愛知医科大学、大阪医科薬科大学、近畿大学、兵庫医科大学、川崎医科大学、久留米大学、産業医科大学、福岡大学、防衛医科大学校

こちらのサイトでは、各大学の受験科目について調べられます。ぜひ、調べてみてください!

また、直前に焦らないように自分が受験する大学の募集要項もしっかり確認しましょう!

医学部小論文の最大の特徴は、医系用語が『注なし』で出題されること

医学部の小論文の最大の特徴は、大学によっては医系用語や最新専門用語が語注なしで出題されることがある点です。出題する教授にしてみれば、「近い将来、医師になるんだから、これくらいは勉強していて知っていて当然ですよね?」ということでしょう。あらかじめ小論文対策の参考書や、医系用語集で勉強していて熟知しているに越したことはありませんが、万一知らない用語が出てきても、うまく推測し、外堀から埋める感じで書き始めて、論旨の通った論文に仕上げましょう。

医学部小論文の出題形式は3パータン

医学部の小論文の出題パターン(形式)としては、主に以下のものが挙げられます。

①自由論述型

「〇〇について、あなたの考えを自由に論じなさい」というパターンです。論理的に破綻の無いような構成をあらかじめ決めてから書き始めるのが重要だと言えます。

②資料分析型

図表やグラフが示され、それを元に論じていくパターンです。文系学部では出題されないパターンで、小論文の出題形式としては最も高度だと言えます。まず図表やグラフを正確に分析し、自分なりの説明を与えてから、意見や論を展開していくようにしましょう。

③課題文型

「次の文章を読んで、あなたの考えを述べよ」と、先方から課題文が提示されるパターンです。課題文の筆者が何を言いたいのかを理解し、その理解をアピールしつつそこから問題点や問題意識を引き出し、自分なりの意見や論を展開していくことが重要です。

小論文では、大学側は将来医師になるにあたって社会的・人格的・道徳的・体力的に問題がないかを判別しようとしています。そういった事情のため、小論文の中で、「何としても医師になりたいという強い意志」や「どうしても医師になりたい確固たる理由」を混ぜ合わせることができれば、さらに強いアピールができると言えます。テーマによっては上記を盛り込むことが難しい場合も予想されますが、問題の課題点に対してしっかりと答え、さらに自分の意見や考えを盛り込むことができるとよいでしょう。

小論文の書き方のコツは『対立しあう要素』を入れ込む

医学部の小論文に関しては、「医系用語」や「最新医療用語」が注なしで出てくる可能性があること以外は、特に気にする必要のあることはありません。逆に言えば、文系学部などで小論文が出題される大学と同じように書けばよいので、そこまで深い対策をする必要はないと言えます。ただ、万が一、知らない専門用語が出てきたとき、くれぐれもパニックを起こさず、冷静に知っている知識を論理的に展開していくようにしましょう。

小論文の文章の組み立て方は大きく分けて2つ

小論文の文章の組み立て方としてここでは大きく分けて2つをご紹介しようと思います。

1つ目は「序論」「結論」「まとめ」という西洋式の構成(3つの塊)で、2つ目は「起・承・転・結」という日本式の構成(4つの塊)です。これらのどちらかで文章書くか決めることで、小論文の構成がわかりやすくなります。どちらがいいというのは無いので自分の書きやすい方を選んでいきましょう。

具体的な書き方の4ステップ

1番目に、問題用紙の空いているスペースなどに、自分なりの構成や要約をまとめてから、本題を執筆するようにしましょう。構成をあらかじめ決めておくことで、自分なりの全体の流れを把握できるようになり、小論文全体で矛盾が生じたり論理的破綻を来たしたりすると言った事態を避けることができます。

2番目に、「序論」もしくは「起」の部分では、与えられたテーマを自分がどう受け止めたのかを明確にし、これから詳しく論じていく内容の出発点となる「問い」や「原点」や「問題点」「問題意識」をはっきりと打ち出すようにしましょう。それらの「問い」や「問題意識」に基づいて、「本論」や「承・転」の部分で詳しく本格的に論を展開していく流れとなります。

3番目に、「本論」や「承・転」の部分では、テーマが内的に孕(はら)んでいる問題点や、テーマとなっている題材が波及している様々な諸問題を扱います。それらの問題が発生している理由や背景を様々な観点から具体的に論じて、「卒業論文やレポートの一番大事な部分」のように、学者になったつもりで、あなたなりの知識・知見や他人の意見をいろいろと組み込み、具体例を挙げつつ、それらを上手に組み合わせながら文章や論理を発展させていきましょう。

4番目に、それらの問題点がどうすれば解決されるのか、あなた自身の考えや方策を具体的に述べます。この部分では、「あなたなりのオリジナリティ」と、「論理を深く発展させていけたか」ということ、さらに「具体的に知識や意見や理由や背景など様々な材料を「料理」できているか」が重要なポイントとなります。

説得力のある文章にするためコツは対立しあう要素

ここで、この「本論」や「承・転」の部分を書くにあたって、説得力のある立派な論文に見えるためのコツをお教えします。それは、「葛藤する要素や、対立する関係」を上手に描ききり、論文全体の性質向上のために利用することです。たとえば、一般的な文系の小論文では、「業者は、湾を干拓したがっているが、住民や漁業者は環境が破壊されるので反対している」という事実や、「政府は原子力発電所を僻地(へきち)に建設したがっているが、僻地の住民は健康への影響という観点から反対している」といった対立関係を組み込むと本格的に響きます。医学小論文でも同じことなので、「欧州諸国では、患者の意思の尊重と尊厳維持という観点から積極的安楽死を認めているが、日本では限りある命を少しでも維持するために延命措置を取り続けることが多い」といった対立要素、葛藤しあう要素を組み入れられると論文として本格的に聞こえます。

また、「結論」もしくは「結」の部分では、なにか新しいことを論じたり付け加えたりする必要はありません。これまで書いて論じてきた内容を振り返って、説得力を持ってあなたの論を響かせられるように、補強すべき点は補強して、繰り返し強調すべき点は強調しておきましょう。「これは読んだ人にうまく伝わらないかもしれない」という点については補足説明を加えてもいいですし、緊張した状況で一気に書き上げたために何か書き忘れた点があればここで書き足しておくのも良いでしょう。

書き終えたら必ず読み返す

医学部小論文とはいえ、基本的な書き方はごく普通の小論文と変わりません。

描き終えた後に確認して欲しいことが4つあります。

思わぬ減点を防ぐためにも、自分が書いた文章を冷静に読み返してください。

1、課題に沿って書けているか

小論文でまず大事なのは、課題を正しく理解し、課題に沿って論理展開していくことです。というのも、課題の意味を取り違えてしまってはどんなに良い文章でも、課題からズレているということで評価をもらえないのです。まずは課題文で筆者が言いたいことは何かを整理し、設問では何を問われているのか理解するのが大事です。それには読解力が要求されます。

例えば、「課題文を踏まえてあなたの意見を書きなさい」なのか、「課題文の意見に賛成か反対かを述べなさい」では、要求されている内容が違いますし、書き方も変わってきます。まずは問われている内容をしっかり理解し、そこからようやく論述内容を考えることになります。

2、根拠を述べて論述に説得力があるか

課題文に即した論述をする上で、その記述は論理的でなければいけません。意見や考えを述べる際にはその根拠や具体例を述べ、説得力を持たせましょう。小論文は作文や感想文ではないので、ただ意見を陳述するだけでは不十分です。

例えば「AIにもっと助けてもらうべき」ということを述べたいとします。これに根拠を付加して、「少子高齢化が進む中で労働力不足が懸念されるため、AIを活用して人間の労働負担を軽減すべき」とするだけでも、文章の厚みや説得力が増します。

3、適切な表現や表記になっているか

記述内容が大切なのはもちろんのこと、表現や表記についても気を使う必要があります。特に、「ら抜き言葉」や略語はついつい使いがちですし、誤字脱字を見落としてしまうこともあります。普段友達と送り合うメッセージやSNS投稿のような感じで文章を書いてしまうと、不適切な表現や表記になってしまうことがあります。日頃から国語の記述問題などで適切な表現をすることを心がけ、練習するようにしましょう。

4、結論を明確化しているか

せっかく良い文章が書けたように見えても、結論が不明確ではもったいないです。結論をどこで述べるかについてはさまざまな表現法がありますが、冒頭で意見を述べた上で最終段落でもう一度意見の総括を行うとまとまりが良いかと思います。特に文字数の多い設問では、結論に至る前に時間切れとなることを避けるためにも冒頭で結論となるような意見を明示すると良いでしょう。

また、結論は明確に、白黒つけて提示することが大切です。「私はその意見に賛成である。」といったようにズバッと言い切りましょう。回りくどい表現や玉虫色の表現は、結論が分かりにくくなってしまうので好まれません。

過去問分析とネタ集めで対策するべし

対策の上で大事なことは、過去問分析とネタ集めです。行きたい大学の過去問を探し、形式やテーマを理解しましょう。短時間で多くの文字数を書く大学であれば速く書く練習も必要ですし、比較的時間の余裕があるのであれば課題の吟味や推敲に時間を割いて密度の濃い文章を作成しなければなりません。

また、よく出題されるテーマを参考書などで把握しておき、王道のトピックについては自分の意見や考えを持っておくと良いでしょう。新聞やニュースを読んで、世の中の動きや最新のトレンドを押さえることも大切です。

医学部では、最新の医療技術やトピックに絡めた出題も行われます。例えば、ロボット手術、生殖医療、新薬、感染症対策、終末期医療などです。受験生に医学的な知識を要求することはなく、主に倫理的な課題についての出題になります。例えば、高額な新薬を末期癌の患者に使うべきか、コロナ患者への差別をなくすにはどうすれば良いか、などです。医学部以外の医療系の学部でも同様の出題が行われる可能性があります。

医学部小論文にはコレ!オススメ参考書2選

小論文は大学によって問題の出し方も形式も全く違います。そのため、何から手をつけ始めたら良いんだろう?という方もたくさんいらっしゃると思います。そんな方におすすめなのが『ゼロから1カ月で受かる 大学入試 小論文のルールブック』です。

 

この本は、小論文をただその場限りで対策しようとするのではなく、本質を捉えて書き上げるための1冊になっています。読みやすく、サラサラっと読めるので小論文について本当にわからない人にとっては手助けとなると思います。

上記の問題集で小論文というものについて掴むことができたら、次は、医学部の本物の問題で練習してみましょう。

『医学部の実戦小論文[改訂版]』

この本は医学部の小論文でよく出題される問題を、テーマごとに分けて記載してくれています。

それぞれのテーマに目を通すと、自分の得意不得意な分野がわかってくるかと思います。不得意な分野については知識を身につけたり解説を読むなどして対策することができます。ここに載っているテーマを網羅することで、合格レベルに近づくことができるでしょう。

そしてここまできたら、最後は過去問に取り組み、自分の小論文の型を習得しましょう。

番外編!二次試験対策に使える+αの資料集

医学部の小論文の特徴は、医学知識を知っている前提で問題が出されることがある、ということです。

課題文の中に専門用語が出てきても注釈がなく、知っていていて当然のように話が進んでいく、ということが多くあります。これら知識を知らないと本番でなんとなくわかった風で文章を書くということになる場合も、、、。

そうならないように、医学部受験に必要な知識を身につけるための本が

『医学・医療概説―医学部進学のための特別講座』です。

時事ネタはもちろん、医療に関するあらゆる知識をまとめた本となっています。この1冊を手元に置いておけば、面接でも使える知識をゲットできるでしょう。

小論文で書いたことが、面接の場で読まれることもある

医学部に限らずどこの大学でもいえることですが、あなたが小論文で書いたことが、面接の場で面接官によって読まれることがあります。面接でよく聞かれる3つのポイントとしては医師志望理由・本学志望理由・高校時代頑張ったことがありますが、これらでより深い質問をしたい時などにに聞かれる場合が多いでしょう。軽く一文だけを突っ込まれることもあれば、一段落丸ごと読まれることもあります。そういう心構えをしておけば、いざ小論文で書いた内容を突っ込まれても対応しやすくなります。

また、なるべく面接で突っ込まれたときに上手に説明・対応できないことは書かない方が得策だと言えるでしょう。そしてもちろん、面接で面接官に読まれたときに恥じないような、社会的・論理的・倫理的に整った立派な文章を書くことが肝要です。医系用語集や、小論文対策の参考書を読むときに、「どうすれば立派な大人の文章を書けるのか」を念頭に置いておくだけで、全然違うと思います。

効率的に小論文対策を進めよう

慣れるまでは大変な小論文。しかし、何度か書いているうちに、書きやすくなってきます。

あくまで、勉強の方が優先となります。

受験生になって一度書いてみて、直前期に数回書いてプロに添削してもらのが、最も効率的です。

時間をかけすぎずに、対策していきましょう。

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