医師の進路と給与の関係は?フリーランス医は稼げる・医学への貢献意欲が高い人が教授に

医者のキャリア

みなさん、医師免許を取得したあとの進路についてご存知でしょうか。

「大学病院で勤務する」というイメージをもつ人が多いと思います。

一般的に研修医の期間は大学病院で勤務する人が多いですが、その後の進路はさまざまで、働き方によって給与も大きく変わります。

今回は医師の進路と年収の関係、そして医学部教授の懐事情について紹介します。

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Contents

医師として働くためには医師国家試験合格と初期研修が必須

医師になるには免許が必要!

医師に関して働いていくにあたって必ず守らなければいけないのが、「医師法」です。
その医師法によると、医師という職業は業務独占が認められており、医師でない人が医業を行ってはいけないとされています。
そして医師免許は国家資格なので、試験に合格し医師登録を行うことで、ようやく医師として働くことが法的に許されます。

医師国家試験に合格するためには6年間分の知識が必要

そもそも医師国家試験を受けるためには、6年以上(進学課程;2年以上、専門課程;4年以上)の一貫した専門教育(4500時間以上)を受けていることが必要です。(5年であっても、5500時間以上の一貫した専門教育を受けている場合には、基準を満たすものとみなされます。)

つまり、医学部に入学して、進学を進めていき6学年のカリキュラムを無事こなしたことが証明されて初めて、医師国家試験試験を受ける資格が与えられるのです。試験に合格するには、もちろん医学に関して最低限の知識を蓄えておく必要があり、それなりの勉強量を要されます。そのため、CBTやOSCEなどの前段階の試験も用意されていて、これらは進学や臨床実習生の認定評価の要素として捉えられたりします。

医師免許をもらった後は2年間の初期研修が必須

医師免許を無事取得したからといって、バリバリ病院で医療業務を行っていけるわけではありません。医師としての仕事内容も全くわからない状態からのスタートなので、こつこつと業務を覚えていく必要がありますし、人の命に関わる仕事なので簡単に一人で判断して危害を加えてしますわけにもいきません。そのため、医師法にもしっかり規定されている通り、診療に従事するには、臨床研修指定病院という決められた病院で2年間にわたって臨床研修をすることが必須となります。また、この研修は労働としてカウントされるので給与が発生してきます。
この臨床研修を終えてようやく診療業務を行うことが許された医師になることができるのです!

 

医師になるときの最低年齢は26歳

前述の通り、医師として働くためには、多くの過程が必要になってきます。それらを考慮して、実際に診療業務を行うことができる医師となれるのにかかる年数を考えていきましょう。

①高等学校を卒業し医学部に入学するまでに、最低18年間。
②医学部に入学したのち、卒業して医師国家試験に合格するまでに、最低6年間。
③医師免許が与えられてから、実際に診療業務を行ってもよいと許可されるまでに、研修が最低2年間。

以上のことから、医師として認められる頃には、最短でも26歳になっている計算になります。

またもちろんのことですが、例えば30歳だからといって医師4年目であるとは限りません。
医学部に入学した時点で、一旦就職した経験がある人や大学院を卒業したという人も多くいます。そして、進学ができずに留年を経験した人や国家試験に合格できず何年も勉強し続けている人、研修期間中にリタイアしてしまった人など、パターンは無限に考えられるので一概に年齢で医師としてのキャリアを判断することは難しいのです。

医学部卒業の平均年齢については、下記の記事を参照してみてください。

 

研修後の医師の進路は病院・研究機関・国・フリーランスなど様々

卒業した後の2年間の研修では、全ての診療科を回って、それぞれの科がどういった仕事をしているのかざっくばらんに学んでいきます。
そしてその中で自分がキャリアを積んでいきたい診療科を決めることになります。
そして診療科を決めた後は、よりその内容に特化した診療を学ぶためにさらに踏み込んで修行していくことになります。
多くの場合、最初の2年間を「初期研修」や「前期研修」と呼び、その後の踏み込んだ研修を「後期研修」と呼びます。
後期研修の期間は、厳密には決められていないものの3~5年間が目安となります。

 

後期研修を終えると、それぞれの医師が望むキャリアに進んでいくことになります。より専門的な資格をとるために大学院に入学することもあれば、より高度な研究をするために大学病院といった専門機関で働いたり、厚生労働省といった行政機関で働くこともあります。

また病院で働いていくにあたっても、医局人事に任せて各地の病院へ転勤をしたり、フリーランスとして自分で各病院へ就職する形態があったりと、医師としてのキャリアは多岐に渡ります。

 

1.病院で働く 【勤務医・開業医】

医師というと、病院で働くイメージが強いのではないでしょうか。

実際、多くの医師が病院に勤務していることが多いです。開業医や勤務医と呼ばれる医師です。

病院といっても、大学病院などの規模の大きな病院から近所のクリニックまで様々です。大病院では大きな手術や重症症例に対応可能なので、経験症例を増やすには適しています。

医院として独自で開業していくには、それなりの資金も必要ですし、なによりスタッフを統率し責任を担っていくのに十分な業務経験が必要になってきます。もちろん家族経営で代替わりをしていくこともありますが、それでも多くの場合は研修後10年を目安に開業医が徐々に増えてくる傾向にあります。

 

2.研究機関で働く 【研究医】

医師の免許を持ちながらも、研究機関で働き、医学研究に従事することも可能です。医学研究は、医学の発展のために非常に重要です。

医学研究はあまり親しみがないですが、今日当たり前に用いられている治療も研究なしでは成り立ちません。

ノーベル生理学賞を受賞した山中伸弥先生も、外科医から研究医に転身し偉業を成し遂げています。

山中先生ついて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

 

3.国の機関で働く 【医系技官】

読者の皆さんは、医系技官というのをご存知でしょうか?

医系技官とは、厚生労働省に所属し国の医療のために働く医師のことです。現場の状況を把握し、それを政策に反映する役割があります。

海外拠点でも活躍できるので、日本の医療のみならず海外の医療も良くしたい!と思っている方には、非常に興味深い職場です。

厚生労働省のHPで詳しく説明されているので、ぜひそちらもご覧ください!

 

4.特定の機関に属さない【フリーランス医】

どこの場所にも属さない、フリーランスという働き方もあります。

フリーランスとは、特定の企業や団体に所属せず、仕事に応じて自由に契約する人たちのことです。医師の場合は、特定の病院や大学医局に所属せず、かつ開業をしているわけでもなく、非常勤で医療行為をおこなっている医師のことを指します。

なかなか馴染みがないと思いますが、多様化が進んだ現代では注目するべき働き方であることは間違いありません!

大学や病院の都合に左右されず、自分の好きな時間帯や仕事内容を選ぶことができます。フリーランスが広がったことで、育児をしている女性医師にとっても働きやすい環境は広がっています。

以降では、フリーランス医師について、詳しくご紹介していこうと思います。

 

フリーランス医は大きく分けて定期非常勤・スポット・両者の組み合わせの3パターン

繰り返しになりますが、フリーランス医とはアルバイト(非常勤勤務)をして生計をたてている医師のことです。

普通、給料よりもバイトの稼ぎの方がいいことってあまりないですよね。でも、医師の世界ではアルバイトの方が圧倒的に時給換算すると稼ぎがいいことが殆どです。

医師の一回のアルバイト代は、専門性や責任の重さにもよりますが、大まかに言うと、専門性のないもので半日勤務で5万、1日で10万、専門性があるもので半日で10万、1日で20万程度です。

特に、時間単価が高いのは、麻酔科、産婦人科、内視鏡検査、放射線レポート等でしょうか。

バイトの値段が高すぎるために、バイトだけで生計をたてるフリーランス医になることが出来るのです。

 

フリーランス医師の働き方は大きく分けて3種類です。①「定期非常勤」②「スポット」③「定期非常勤」と「スポット」の組み合わせです。詳しい話は転職エージェントのサイトを見てみてください。

「定期非常勤」の働き方は契約バイトに近い

「定期非常勤」は、半年から数年の長期の契約期間で、週何回、1日あたり何時間などと曜日や時間を決めて働く勤務形態です。

自分の都合に合わせて働き方を調整できる上に、長期間安定して仕事を得ることができます。さらに例えばA病院で月曜と水曜に6時間ずつ、B病院で木曜に5時間、といったように複数病院で「定期非常勤」として仕事をすることもできます。特に専門性の高い医師であれば、複数病院で外来を週1回ずつ担当するだけでも重宝されることでしょう。また、日中の勤務ではなく夜勤や当直専門の医師として非常勤で仕事をすることも可能です。病院側としても、高い専門性のある医師を常勤で雇わなくても週1回など定期的に非常勤で来てもらえることや、常勤の医師に代わって当直を担当してくれる代わりの医師がいることはありがたいことです。

「スポット」の働き方はスポットバイトに近い

「スポット」は、常勤医師が学会参加や病気などで診療ができないときに、代理として1日〜数日代わりに外来や当直に入る形態です。

1回あたりいくらといった条件で契約し、「定期非常勤」よりも1回あたりの報酬が大きいようです。夏休みや年末年始などには需要が増しますし、給料も上がるためその期間を狙って仕事をするフリーランス医師も多いようです。最近では、ワクチン接種のスポットバイトも多いですし、健診など医師でないとできない仕事は多いので「スポット」で募集される仕事も多いです。一方で、安定して仕事が供給される保証はありません。

「定期非常勤」と「スポット」を組み合わせた働き方もできる

「定期非常勤」で安定して仕事を確保しつつ、「スポット」で高時給の案件を単発でこなすといった働き方もできます。フリーランスは自分の好きなように働き方を決められるので、こうしたいいとこ取りの働き方ができるのです。組み合わせた働き方でも、常勤医師よりも短い勤務時間で高収入を得ることが可能です。

 

フリーランス医のメリット・デメリット 高収入だが不安定

フリーランス医のメリットとデメリットをそれぞれ紹介します。

メリット 自分の都合で働ける

・自分の好きなように働き方やライフプランを設計できる

→常勤医として働いていると、どうしても医局や病院の都合に振り回されることもありますし、残業や当直に追われることも多いようです。しかしフリーランスであれば、その辺りの縛りから逃れることができます。

・短時間で高収入を得られる

・研究活動や他の分野での業務と並行して医師としての業務ができる

・子育てや介護など常勤で働くことが難しくても柔軟に仕事ができる

・組織のしがらみや人間関係から解放される

 

安定を求める医師には向かないというデメリット

・雇用が安定していない

・学会参加が自己負担であるなど新しい知識や技術を習得する機会が少ない

・専門医を維持できないこともある

→常勤医として働いている場合、学会参加の機会をもらったり、参加費を医局が負担してくれたりするほか、各種勉強会が充実しているために最新の知識や技術を取り入れやすくなります。また、診療科によっては専門医維持に必要な条件が定められていることがあり、常勤の働き方でなければ専門医を維持できないこともあるようです。

・医療事故の発生時などトラブル時に後ろ盾がいない

 

 

フリーランス医とは正反対!常勤医として教授を目指す道

常勤医は特定の病院と雇用契約を結んで、主としてその病院で勤務する働き方です。

わかりにくい表現を使いましたが、普通のサラリーマンや役所に勤める人と似た働き方です。フリーランス医とは正反対ですね。

常勤医の先生たちの殆どは、研修医が終わった後、大学の医局に入局し、医局の意向に従って働くことが多いです。

医局の意向に従って働くってどういうこと、、、?と思われる方もいるかもしれませんが、基本的に医師は研修医が終わると専門医を取るために大学の医局に入局することが多いです。そして、医局に入ることで得られるメリット(専門医取得など)を得るために、医局の意向に従って働くことになります。

しかし、大学病院に勤める先生たちは基本給が少ないため週1でバイト(外勤といいます)をしています。大学病院に勤める場合、役職がつくまで給料が上がらないことが殆どなので、基本的にバイトをしないと生活が苦しい考えていいと思います。特に働き始めは、皆さんの想像する稼ぎのいい医者には、大学病院の給料だけではなれません。

しかし、この下積み時代を生き抜き、キャリアを積んだ人のみが、医学部において臨床や教育で指導的な立場である教授になれる可能性を手にすることが出来ます。

 

大学の給料だけでは大儲けできない 平均年収900万円程度

一見華やかそうに見える教授ですが、実際のところ大学から出る給料はそこまで多くないようです。医学部の教授は全国に2500人ほどいると言われていますが、大学からの給料のみだと平均年収は900万円ほどだそうです。民間病院に勤務する教授と同年代くらいの医師は平均年収が1500万円ほどですし、民間病院に勤務する若手医師でも年収が1000万円を超えることは多いので、大学教授の給料は高くないということが言えるでしょう。どんなに苦労して教授になって大学に貢献したとしても、大学から多額の給料をもらうことはできないのです。ちなみに、学部長クラスでも平均年収は1000万円に届かず、学長にまで上り詰めたとしても1250万円ほどしか大学からはもらえません。

 

国公立と私立とで年収に違いは特になし

では、国公立大学と私立大学では医学部教授の年収に差はあるのでしょうか。国立大学では、どの大学でもどの学部でも教授の給料はほぼ変わらず、40代の教授の場合820〜950万円程度だそうです。私立大学は大学によってだいぶ差があるようで、800〜1200万円ほど。私立の場合は経営母体の経済力によるところも大きいでしょう。いずれにしても、教授職はそこまで稼げるものでもなさそうです。

 

大学外でも仕事がたくさん!アルバイト診療の報酬、講演料、原稿料、謝礼金など

ここまで見てきて、案外医学部の教授は大学からお金をもらっていないことがわかりました。しかし、世間のイメージでは教授は華やかな生活をしているようにも思えます。それは、大学の給料以外の収入があるためです。具体的には、アルバイト診療の報酬、講演料、原稿料、謝礼金などです。

大学病院に勤務している医師は、大学からの給料だけでは生活が成り立たないため大学医局が用意したアルバイト先で診療をすることが多くあります。教授であっても例外ではなく、大学の関係先などでアルバイト診療をします。先ほどのフリーランス医と同様です。

また、教授であれば製薬会社などから講演や執筆を依頼されることも多くあります。その際の報酬も1回あたり10万円以上であったりと、かなりお金がもらえるようです。有名人になればメディアへの出演もありますし、監修などを依頼されることも増えるでしょう。

さらに、医局員が結婚する際に仲人を勤めて謝礼をもらったり、学位を取る際の謝礼をもらったりと、非公式な収入もあるようです。しかし、副業に関しては国立大学では制約が多いこともあるようです。自由に講演料や原稿料をもらうことができないケースもあるようです。

ちなみに、上皇陛下の心臓のバイパス手術を執刀された順天堂大学の天野教授は、年間所得が5000万円を超えるとインタビューで述べています。そのレベルの有名教授になると外部からのオファーもかなり多いのでしょう。そこまでの有名人でなくても、教授であればアルバイト診療を含め食うには困らないことでしょう。年収2000万円くらいにはなるようです。

 

教授は他の医師より稼いでいるわけではない

しかし、教授は他の一般的な医師より稼いでいると言えるのでしょうか?先ほど述べた通り、大学病院に勤務する多くの医師はアルバイト診療をしています。また、大学病院以外の病院で勤務している医師は大学病院にいるよりも高い給料をもらっていることが多いです。

実際、全年代の医師の平均年収は1400万円前後だそうです。これは医学部教授の平均年収よりも高いことになります。民間病院で働く若手医師が大学病院の老教授よりも高給を貰っているなんてこともあるでしょう。もちろん科や地域によってどのくらい稼げるかは変わってきますし、働き方にもよります。教授になるには長い医師経験が求められますし、望んでなれるわけではないので、もし華やかさや高収入に憧れて教授を目指す人がいるのであればそれはナンセンスかもしれません。

金銭面ではない!教授は医療への貢献の気持ちが大きい

こう見ると、医学部の教授は激務で大変な道のりを経ているにもかかわらず金銭面ではあまり良い思いをできていないように感じます。

しかし、お金目当てで教授職を務めている人はほとんどいないはずです。患者さんのため、世の中のために貢献したいという思いで真摯に臨床や研究に取り組まれ、実績を残されてきた方しか教授にはなれません。どんなに優秀でもタイミング次第では教授になれませんし、学生や若手を教育しようという熱意がないとつとまらないでしょう。とてもお金欲しさにできるものではありません。医学部の教授が思ったよりも華やかではないことを知ると、教授に対する見方も変わってくるかもしれませんね。

白と青のチェックのドレスシャツを着た女性

まとめ 医師の進路は多様!自分が何に重きを置くかが大切

いかがでしたか。

今回は医師の進路について、特にフリーランス医と教授について紹介しました。

時間・給与的余裕が持てるフリーランス医、安定しており自身のスキルアップ、そして教授の道も目指せる勤務医、どちらも良さがありますね。

どの働き方が良い・悪いではありません。

私は今医学生ですが、「自分の大切なものは何か?」を考えて進路を選んでいきたいです。

 

 

 

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