医者にドイツ語は必要?外国語でカルテを書く理由
医学部に入ったら第二外国語はドイツ語にしようと決めている方は多いでしょう。
しかし実際に医師になってからドイツ語を使用する機会はあるのでしょうか?
カルテは外国語で書くべきなのかについてもあわせてご説明します!
Contents
医者にドイツ語は必要か?
会話や文法は必要ない
第二外国語の授業で習うような会話や文法は医師になってからは必要ありません。さらに言うと医学部の教養課程の試験を乗り切ってしまえばその先は全く使う機会はありません。そもそも授業で習う程度の内容など試験が終わればきれいさっぱり忘れてしまう人がほとんどです(笑)。私の大学では第二外国語という授業すら廃止されてしまいました。ドイツに留学する予定があるならば話は変わってきますが、学会など国際的な場面での共通言語は英語ですので外国語を勉強するならまずは英語を勉強しましょう。
ごく一部の医学用語を除き単語も必要ない
日常会話で使われるようなドイツ語の単語を医師になってから使うことはありません。強いて言えばドイツ語由来の医学用語は使いますが、そういったものは授業や実習で当たり前のように覚えますので(というより日本語訳がない場合もあります)特別に勉強する必要はありません。以下にドイツ語由来の医学用語の一例を挙げてみました。
カルテ、レントゲン、ギプス、シーネ(副木)、アレルギー、チアノーゼ、メス、ゾンデ、ワイセ(白血球)、アナムネ(予診)、カイザー(帝王切開)、ツッカー(ブドウ糖)、クランケ(患者)
今でもよく聞く単語からほとんど聞かなくなった単語までありますね。和製ドイツ語も使われています。
上級医はオーベン、下級医はネーベンと呼ばれますが、その中間くらいの立ち位置の医師のことをチューベン(中ベン)と呼ぶこともあります(もちろんドイツ語ではありません笑)。
またステる(死亡、sterbenに由来)やムンテラ(患者さんへの病状説明、Mund Therapieに由来)なども調べたら出てきましたがまず聞いたことがありません。実際に使っている医師は少ないでしょう。
カルテはドイツ語で書くの?
カルテは基本的に日本語で書きます。ごくまれに英語で書く先生もいらっしゃるようですが、かなり少数です。ドイツ語で書くことはないと思ってよいでしょう。そもそもカルテの内容は多職種のスタッフで共有する必要があるため、誰もが読めるように記載しなければなりません。英語やドイツ語で記載した場合、他のスタッフが読めずに何らかのミスにつながる可能性があります。紙カルテの場合はなるべく丁寧な文字で日本語で書くのが普通です。最近では電子カルテを導入する病院が増えてきました。カンファレンスでスクリーンに電子カルテの内容を映し出してみんなで見ながら議論をすることが多いので電子カルテも誰でも読めるように日本語で記入します。ただし、例えば肺雑音の一種であるrhonchiやラ音(ラッセル音、Rasselgeäuschに由来)など日常的に使用する単語はそのまま記載することが多いです。実習でお世話になった先生によると、呼吸器の分野にドイツ語の名残が多く残っているのは昔呼吸器学がドイツで進んでいたからだそうです。
カルテを外国語で書く理由
漢字を書くより速く書ける
医学用語は漢字で書くと大変な長さと画数になることがあります。そんな時に英語でサラサラ書けると楽です。とはいえそういった医学用語には略称がありますので、カルテは基本的に日本語で書いて長い名称は英語の略称で書くことがほとんどです。以下にぱっと思いついた略称を挙げてみました。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)、IE(感染性心内膜炎)、HOCM(閉塞性肥大型心筋症)、CML(慢性骨髄性白血病)、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、SAH(くも膜下出血)、RTA(尿細管性アシドーシス)
これらはごく一例ですが、いちいち書いていたら腱鞘炎になってしまいますね(笑)。ちなみに電子カルテでは予測変換ですぐに色々出てきますのでとても楽です。
患者さんに見られないようにする
患者さんがふとカルテを目にしたときに知りたくない情報を意図せず知ってしまう可能性があります。そのようなときにカルテを外国語で記載していれば見られてしまっても内容まで分かってしまう可能性は低いです。しかしそうとは言え、日本語で書いてあったとしても紙カルテの字をちらっと見ただけで内容を瞬時に分かってしまうことはなかなか考えられませんし、電子カルテの場合はパソコンの画面は患者さん側ではなく医師の側に向いていますのでうっかり見てしまうといったことはほぼないでしょう。
慣習で外国語を使っている
年配の医師の中には慣習でドイツ語や英語を使ってカルテを書く先生もいらっしゃいます。しかしよほど海外経験が長いという場合でない限り、文章全てをドイツ語や英語で書く先生はほとんどいらっしゃらないと思われます。
外国語を勉強するなら英語を勉強しよう
もしこれからの医師人生において何か外国語を習得しようと思うなら英語を勉強しましょう。英語を習得するメリットはたくさんあります。
国家試験に出題される
医師になる以前の話ですが、近年の国家試験では英語の問題が出題されることが増えてきました。医学英単語を知っていないと解けない問題が出るので必要最低限のものは勉強して覚える必要があります。医師になってからも英語が必要な場面が増えてくるという厚生労働省からのメッセージですね。
論文が読めるようになる
医師は常に勉強する必要がありますが、論文を読む機会もとても多いです。最先端の論文は英語で書かれていることがほとんどなので英語を勉強しておくことで論文を読むときの負担が減ります。最近のGoogle翻訳はかなりレベルアップしていますが翻訳を鵜呑みにするのは怖いのでしっかり自分の力で読めるようにしたいものですね。
学会で役に立つ
将来国際学会に参加することになった時に、発表だけでなく質疑応答も全て英語で行われるためしどろもどろにならないためにも英語を勉強しておくと役立ちます。学会で知り合った人とのコミュニケーションにも必要ですので会話力も身に付けておきたいところです。
まとめ
いかがだったでしょうか。この記事を書いていて、私も英語を勉強しなきゃなぁと思ってきました…。略語だけではなく、それが何の略なのかもあわせて覚えておくと単語量が増やせるのでぜひやってみましょう。
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