医学部の男女の比率は?女子の合格者は4割へ

医学部コラム

大学受験の中でも人気が高く、最難関の学部とされている医学部。人気の高まりに合わせて、偏差値もどんどん上がってきています。

河合塾のデータでは医学部のボーダー偏差値は65程度の大学が多く、中には70を超える大学もあります。

文部科学省の発表によると、令和6年度に医学部医学科に出願した受験生は、のべ120102人。それに対して合格者数は、のべ13871人。合格率は11.5%です。さらに、複数の大学に合格する受験生も多いことから、実際に医学部医学科に進学した人数は9243人にとどまります。

国公立と私立では、私立の方が受験者数が多いために合格率がどうしても低くなってしまいます。合格率が10%に満たない大学もありますし、中には5%を切るところも。繰上げ合格を入れてこの数字ですからかなりの狭き門ですね… 他の学部に比べて、かなり厳しい戦いとなっています。国公立大学であれば倍率3倍程度、私立大学では倍率が10倍を超えることも多々あります。

今回はそもそも女性差別とは何だったのか、現状、そして心配の必要性が無い事を説明したいと思います。

 

男女差はあるの?

数年前、一部の大学で女性受験生や浪人生を合格させにくくする不正入試が行われていたことが発覚し、大きく報じられました。実際、不正入試があったとされる2013〜2018年の男性の合格率の平均が11.25%だったのに対して女性の合格率の平均は9.55%であり、男性の方が合格しやすいといったことがありました。

しかし、令和3年度の数字を見ると男性13.51%に対し女性13.60%と、わずかながら女性の方が合格率が高い結果となりました。これは史上初めてのことです。不正が行われていた大学では国からの指導などが行われ、改善が進んだことが要因と考えられています。女性の合格率が男性の合格率を上回る大学も全81大学中42大学となっています。

なので、現在では男性だから受かりやすい、女性だから受かりにくいといったことはほぼないと考えられます。年齢別の合格率は文部科学省から最新の数値は公表されていませんが、不正入試があったとされる大学では以下の通り改革が進んでいるため今後年齢や性別を理由に入試で差別される可能性は以前より低いでしょう。

 

女子の合格率が男子の合格率を上回るのは23校

国公立大学:旭川医科大学、弘前大学、東京大学、富山大学、金沢大学、島根大学、山口大学、高知大学、九州大学、佐賀大学、名古屋市立大学、京都府立医科大学、奈良県立医科大学

私立大学:、杏林大学、北里大学、聖マリアンナ医科大学、東海大学、金沢医科大学、愛知医科大学、近畿大学、川崎医科大学、久留米大学、福岡大学

※その他、東京女子医科大学は男子を募集していません。

このうち、弘前大学、島根大学、聖マリアンナ医科大学では女性合格者数が男性合格者数を上回っています。

旧帝国大学医学部の男女別合格率

医学部の中でも、特に名門とされる旧帝国大学の7つの大学の令和6年度の男女別合格率を抜粋しました。

大学名 男性合格率 女性合格率
北海道大学 33.3% 24.3%
東北大学 30.1% 19.5%
東京大学 33.5% 35.5%
名古屋大学 37.4% 37.9%
京都大学 39.8% 38.1%
大阪大学 39.7% 38.1%
九州大学 42.4% 52.6%

東京大学、九州大学では女性の合格率の方が高く、名古屋大学はほぼ同じくらいでした。しかし、北海度大学、東北大学、京都大学、大阪大学では男性の合格率が女性の合格率を上回っていました。

私立大学も含めた各大学の男女別合格率については、文部科学省から公表されているので詳しく知りたい方はそちらをご覧ください。

 

 

医学部入試の女性差別問題では女性を一律減点していた

発覚したきっかけは裏口入学

医学部の女子差別が発覚した発端は、2018年に文部科学省の官僚が自分の息子を東京医科大学に裏口入学させたことでした。
文科省の役人が息子を合格させる代わりに、文部科学省の行う私立大学支援事業に東京医科大学を決定したのです。

 

この裏口入学問題を調べる過程において「入試が公正に行われていたか」の調査も行われ、その副産物として「女性や浪人生に対して不当に一律減点をしていた」ことも明らかになりました。

 

具体的には、「100点満点の小論文に0.8を掛け、現役〜2浪までは+20点、3浪は+10、女性と4浪以上は+0」されていたとか。(参考:衆議院質問
女性の場合100点をとったとしても80点扱いになり、現役男性の75点と同じとして扱われるわけです。

 

その後厚生労働省が全国81大学を調査した所、複数の大学で女性や浪人生、卒業生の子女に対しての得点調整が明らかになりました。
不適切、もしくは不適切な可能性が高いとされたのは81校のうち10校でしたが、得点調整の疑惑のある大学は20〜30校にのぼったとされています。

 

このときに始まったわけではない⁈ 男子優位の医学部入試の歴史

2018年に明るみに出た「医学部入試不正問題」。

しかし、医学部受験生の間や予備校などでは、以前から「女子と浪人は減点される」「私大は親が医学部の卒業生だったり、知り合いがいたりする場合多額の寄付をすれば入れる」と言われていました。

そのため、女子や多浪生は特に勉強を頑張らないと合格できないのが『常識』とされていたのです。

 

参考として、少し古いですが医師国家試験の男女別合格率を見てみましょう。(クリックで拡大します)(引用:厚生労働省 報告書

毎年男性に対して女性の合格率が2〜3%ほど高い様子が分かると思います。
男子より女子のほうが毎年勉強を頑張っている、というのはおかしな話なので、そもそも入り口の時点で平等に採られていなかったと考えるのが自然でしょう。

 

女性差別が行われた理由は上層部に残る古い考え

では、女性が入試で差別された理由は何でしょうか。

調査によると以下のような様々な理由が挙げられました。

《女子を医学部にあまり入学させたくない理由》
・妊娠や出産で離職したり仕事をセーブしたりする可能性が高い
・地域枠で採用しても「夫の転勤」などの理由でその地域に残らない可能性が高い
・男子に比べて体力がない
・男子に比べて根性がない

後半2つはさすがに「それはちょっと……」と思う人が多いかもしれませんね。

 

体力は女性の方が男性に比べて劣っていることが多いかもしれませんが、あくまでそれは一般論であり、平均を取ればそうなる、という話です。
実際には外科や救急で活躍する女性医師もおり、男性でも体力のない人はいます。
体力を気にするのであれば、一律で女性を減点する必要はないはずです。

では、前半の2つ、結婚や家庭の理由などで転職・離職しやすいというのはどうでしょうか。
「私は結婚しないから関係ない」「実際にそうなんだから当然かな」などの意見があるでしょう。

実は、女医向けのWEBマガジンで行われたアンケート調査でも、65%が「理解できる」「ある程度は理解できる」と回答しています。
(参考:株式会社エムステージホールディングスのプレスリリース

 

調査結果を見てみると、女性医師本人も「悔しいけれども、実際に男性ほど働けないのだから仕方ない」と考えていることが多いようです。

 

妊娠や出産に伴って当直に入れなくなったりする女性は多いものどちらかというと能力的に女性に問題があるのではなく、働き方として男性より女性の方が医師としての貢献度が低いことが問題、とみなされているのです。
結婚したり子どもがいたりしても仕事に影響がないため、優先して男子を入学させよう、と不正を行った医学部は考えたのです。

昼間に緑の芝生に手を当てる人

2024年医学部女性比率ランキングと裁判の進行状況を説明

では現状はどうなのでしょうか。

最新版である2024年度入試の男女比は以下の通りです。(判明している大学のみ)。

順位 大学名 男女比(2018年度) 男女比(2024年度)
1 筑波大学 63:37 35:65
2 聖マリアンナ医科大学 60:40 43:57
3 東邦大学 61:39 48:52
4 順天堂大学 39:31 54:46
5 琉球大学 62:38 55:45
6 島根大学 55:45
7 日本医科大学 66:34 56:44
8 弘前大学 57:43 56:44
9 関西医科大学 62:38 57:43
10 滋賀医科大学 63:37 57:43
11 富山大学 63:37 57:43
12 北里大学 63:37 58:42
13 愛知医科大学 62:38 58:42
14 岐阜大学 72:28 59:41
15 香川大学 62:38 60:40
16 鳥取大学 67:33 61:39
17 独協医科大学 62:38 61:39
18 自治医科大学 67:33 62:39
19 徳島大学 62:38 62:38
20 福岡大学 62:38 62:38
21 鹿児島大学 67:33 62:38
22 山口大学 65:35 63:37
23 大阪医科薬科大学 69:31 64:36
24 近畿大学 65:35 64:36
25 東北医科薬科大学 76:24 65:35
25 東京科学大学 71:29 65:35
27 三重大学 68:33 65:35
28 浜松医科大学 61:39 65:35
29 神戸大学 63:37 66:34
30 岩手医科大学 66:34
31 札幌医科大学 67:33
32 広島大学 72:28 69:31
33 熊本大学 69:31 69:31
33 金沢大学 78:22 69:31
35 奈良県立医科大学 72:28
36 大阪公立大学 76:24 72:28
37 山梨大学 79:21 74:26
38 九州大学 84:16 77:23
39 北海道大学 79:21 78:22
40 東京大学 83:17 80:20
41 京都大学 82:18 81:19

(参考:医学部受験マニュアル)

 

「女子比率が低い=差別している」 わけではない

 

「差別が完全にない」と言い切れるわけではありませんが、これは単にそもそもこれらの大学を受験する女性が少ないと言えるでしょう。

詳しくはこちらのサイトを参考にしてください。

 

裁判の現状

元受験生が大学を訴え、複数の医学部に賠償命令が出たことをご存じの方も多いでしょう。

最近では、元受験生の女性4人が聖マリアンナ医科大学を相手取り、計3280万円の損害を求めている訴訟について、2023年12月25日に判決が言い渡されます。

詳しくはこちらのサイトからご確認ください。

茶色の木製のテーブルに黒い十字架

「女子比率が高い・差別していなかった」で大学を選ぶのはナンセンス

これまでの記事を読んで「よし、女子率が高い大学を選んで受験しよう」「差別していた大学は除こう」と考えるのはオススメしません。

先ほども記載したように、そもそも女性受験生が少ない場合もありますし、差別が明らかになった大学こそ今は一切差別をせず入試を行っていると考えて良いでしょう。

それよりも少しでも合格率を上げるために、自分の偏差値や学費、入試日程を考慮して受験できる大学はできるだけ多く受験することをオススメします。

 

性別を気にして受験をためらう必要はない

今回は「女性×医学部受験」をテーマにお届けしました。

女性だからといって差別していた過去。そして入試における差別こそ改善しつつあるも今も消えない古い考え。

これらは同じ女性としてとても悲しいです。

しかし、「女性だから」といって医学部受験をためらう必要は全くありません。

医学部受験で合否の多くを占めるのは1次試験、すなわち学科試験です。

入試における差別が明らかになり、点数調整が行われていない(断言はできないが)現在、男女の合格率はほぼ等しいと考えて良いでしょう。

医学部受験は、合格率が非常に低く難関であると言えます。現役生だけでなく、浪人生や再受験生も多く受験するためにどうしても激しい競争になってしまいます。過去には性別や年齢によって合格率が大きく異なっていた時代もありましたが、現在では是正されており誰もが医学部合格のチャンスを持っていると言えます。

医学部合格のために必要な実力をつけることがまず重要ですが、その上で自分自身の実力に見合った適切な受験校選びが大切です。模試などで実力を見極めつつ、入試までに少しでも実力を上げられるように日々の受験勉強に励んでください!

 

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